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文字数 1,423文字
「……本当にここでいいんだろうな?」
「うん、間違いじゃないはずだけど」
駆さんとシュウヘイさんが辺りを見回す。その昔、ここには『カブキ・アクション』というアトラクションがあった。しかしグローバルワンダーランドのコンセプトとそのアトラクションは大きく異なっていた。そこだけ異空間みたいだったと郁乃さんは言う。
なんでも名前通り歌舞伎をモチーフにしたものだったが、使われていた人形は古く、髪はぼさぼさ。まるでお化け屋敷のようだったらしい。
カブキ・アクションの出口は鍵が開いていて、そこからアトラクション内部に入れるようになっていた。
扉を開けて中に入ると、赤いランプが点灯していて不気味だった。しかも埃っぽいのと錆び臭いにおいが鼻をつく。炎天下に比べたら、ぞくっとするくらい寒いのも怖い。
「気味悪いね」
「早く帰りたいなぁ……」
私と雫はついぼやいた。ショップ希望だったのにアクターなんて無理だし、辞退するしかない。それにこんな真っ暗な場所に集合して何をするのかもわからない。
だけど郁乃さんと蓮史郎くんは楽しそうにしていた。
「カブキ・アクションの裏側を見られるなんて……!」
「へぇ~、アトラクションの裏側ってこういう風になってんのか。フツーにゲストとして来てたらわかんねぇよな~」
「これだからオタク郁乃とチャラ男は! あ~やだ! あかりはこんな暗い場所にいたくない! 研修の最後にダンスのレッスンでもする気なの? だったら大きな鏡がある場所じゃないと!」
あかりさんはスイートチョコレートのポップコーンを食べながら、ぷんすかしている。
しばらく暗い中で待っていると、パソコンのチャットが突然切れた。
それと同時にコツンコツンと足音が聞こえる。みんな自然と無言になる。
もしかして、Ms.EPIC? 待っていると、ミライゾーンのガイドのコスチュームを着た、男性と女性がこちらに来た。
「お待たせしました! 研修の最後は、みなさんにショーを見学してもらいます!」
ショーの見学? それだったら他のゲストと一緒に観ればいいんじゃ……。私が怪訝な顔をしているのに気づいたらしく、ガイドの男性は笑顔で付け加えた。
「もちろん、みなさんはアクター候補なので、普通の客席から観てもらうわけじゃありません。バックステージの見学です!」
「ふうん、それだったらあかりも気になるわ。あの大人数が出演しているステージで、裏方の導線はどうなっているか不思議だったし。ね? 郁乃」
ずっと怒っていたあかりさんも、さすがにダンサーとして興味を示したらしい。郁乃さんもうなずく。蓮史郎くんもだ。
蓮史郎くんからパソコンを受けとると、ガイドさんはまたチャットのウインドウを開く。
「Ms.EPIC、全員います。確認OKです!」
一度切れたチャットが、再度つながりMs.EPICが映し出される。
『みんな、おつおっつー! 今日はお疲れちゃん! それで、これからショーを観てもらうんだけど、その前に……今日、一番活躍したのは誰だと思う? その人にゲストとしてちょこっとステージに出てもらおうと思うんだよねぇ』
「えっ! 聞いてないわよ!」
あかりさんが取り乱す。この人、プライド高そうだもんな……。それにかなりダンサーとして自信もあるから、最初からアクター希望だったんだし。ゲストとはいえステージに出られるなら、きっともっとみんなに愛想もよくしていたかも。
だって、今日一番活躍したのは――。
「うん、間違いじゃないはずだけど」
駆さんとシュウヘイさんが辺りを見回す。その昔、ここには『カブキ・アクション』というアトラクションがあった。しかしグローバルワンダーランドのコンセプトとそのアトラクションは大きく異なっていた。そこだけ異空間みたいだったと郁乃さんは言う。
なんでも名前通り歌舞伎をモチーフにしたものだったが、使われていた人形は古く、髪はぼさぼさ。まるでお化け屋敷のようだったらしい。
カブキ・アクションの出口は鍵が開いていて、そこからアトラクション内部に入れるようになっていた。
扉を開けて中に入ると、赤いランプが点灯していて不気味だった。しかも埃っぽいのと錆び臭いにおいが鼻をつく。炎天下に比べたら、ぞくっとするくらい寒いのも怖い。
「気味悪いね」
「早く帰りたいなぁ……」
私と雫はついぼやいた。ショップ希望だったのにアクターなんて無理だし、辞退するしかない。それにこんな真っ暗な場所に集合して何をするのかもわからない。
だけど郁乃さんと蓮史郎くんは楽しそうにしていた。
「カブキ・アクションの裏側を見られるなんて……!」
「へぇ~、アトラクションの裏側ってこういう風になってんのか。フツーにゲストとして来てたらわかんねぇよな~」
「これだからオタク郁乃とチャラ男は! あ~やだ! あかりはこんな暗い場所にいたくない! 研修の最後にダンスのレッスンでもする気なの? だったら大きな鏡がある場所じゃないと!」
あかりさんはスイートチョコレートのポップコーンを食べながら、ぷんすかしている。
しばらく暗い中で待っていると、パソコンのチャットが突然切れた。
それと同時にコツンコツンと足音が聞こえる。みんな自然と無言になる。
もしかして、Ms.EPIC? 待っていると、ミライゾーンのガイドのコスチュームを着た、男性と女性がこちらに来た。
「お待たせしました! 研修の最後は、みなさんにショーを見学してもらいます!」
ショーの見学? それだったら他のゲストと一緒に観ればいいんじゃ……。私が怪訝な顔をしているのに気づいたらしく、ガイドの男性は笑顔で付け加えた。
「もちろん、みなさんはアクター候補なので、普通の客席から観てもらうわけじゃありません。バックステージの見学です!」
「ふうん、それだったらあかりも気になるわ。あの大人数が出演しているステージで、裏方の導線はどうなっているか不思議だったし。ね? 郁乃」
ずっと怒っていたあかりさんも、さすがにダンサーとして興味を示したらしい。郁乃さんもうなずく。蓮史郎くんもだ。
蓮史郎くんからパソコンを受けとると、ガイドさんはまたチャットのウインドウを開く。
「Ms.EPIC、全員います。確認OKです!」
一度切れたチャットが、再度つながりMs.EPICが映し出される。
『みんな、おつおっつー! 今日はお疲れちゃん! それで、これからショーを観てもらうんだけど、その前に……今日、一番活躍したのは誰だと思う? その人にゲストとしてちょこっとステージに出てもらおうと思うんだよねぇ』
「えっ! 聞いてないわよ!」
あかりさんが取り乱す。この人、プライド高そうだもんな……。それにかなりダンサーとして自信もあるから、最初からアクター希望だったんだし。ゲストとはいえステージに出られるなら、きっともっとみんなに愛想もよくしていたかも。
だって、今日一番活躍したのは――。