2-14
文字数 1,654文字
『今のはちょ~っと派手だったかなぁ? どうだった? ミホさんの死に方。ま、りえかさんには喜んでもらえたかもね』
「ええ、ありがとうございます、ミスターEPIC。でも……まだ面接は終わりじゃありません。これからも気を引き締めて頑張りますわ」
りえかさんはカメラに向かってお辞儀した。
ミスターEPICはりえかさんがミホさんと面識があったことを知っていた……?
だからわざわざ残酷な殺し方で……?
『松山クン、何を考えてるのかわからないけど、次の質問をするから、ちゃんとしてよね~?』
「ちっ……」
まだ面接は終わりじゃない。多分……残りが1人になるまで、この殺人ゲームは終わらねぇってことかよ。
「次の質問はなんだ?」
御堂がミスターEPICに質問する。
『まぁ、今度は普通の質問だよ。ずばり、今までの人生で打ちこんできたものは何か――。一般の企業でもこの質問はあるから答えられるよね?』
普通の質問。確かにそうだ。普通の企業の面接でも聞かれることだろう。
だけど俺はそれに対する答えを持っていない。
大学時代に何をやった? 引きこもって懸賞生活だ。ゼミなんて最低限しか出席してないし、大学内に友人もいない。彼女もいなければ、バイトもしてない。はっきりいって、大学に入ってから尚更人と接することが皆無になっていたのだ。
普通の質問にすら、俺は答えられないのか……。ここまで生き残ってきたが、終わったな。
『さぁ、誰から行こうかなぁ?』
りえかさんはモデルの仕事の話をし、瑞希さんは秘書だったときの仕事内容を語った。キャットも御堂も、大学在学中の出来事を話していた。――最後に残ったのは俺だ。
『今まで元気だった松山クン。キミがラストだね。どんな面白い話をしてくれるのかな?
ははっ、今から楽しみだよ~!』
ミスターEPIC、悪ぃが俺の話なんて面白くねぇよ。
仕方ない。ここで終わりだ。俺が今まで打ちこんだことは……。
「ない」
「ほぇ? あれ~? 今の幻聴かなぁ? 『ない』って」
キャットがわざとらしく聞きなおす。俺は先ほどよりも大きな声で言った。
「ないんだ。打ちこんだことなんて、何も! 本気で取り組んだことも、必死で頑張ったことも、俺の人生で一度もないんだよ!!」
大声でわめき散らす俺を、みんなは呆然と見つめる。
「……なんだって簡単にできた。苦労なんてしなくても、何事もうまくいった。人間関係がなくたって、問題なかった。そんな人生に疑問さえ抱かなかったんだ! ……だからこの面接を受けて、初めて自分の命が危なくなって、ようやく今までの生き方が間違いだったと知った。だから俺は生き残って、生まれ変わりたいと思った……でも、それも無理だよな。
みんなとは違って、俺には何もない。それこそ死んだシナガワや川勢田さんや東さん、ミホさんの方がきっと……」
ぐっ、と拳を握ると、俺は頭を垂れた。
りえかさんの合図で多数決が始まる。選ばれたのは――俺だ。
『はい! 不採用に決定したのは松山ヒロアキクンだね! じゃ、みんな~、彼を連れて来てくれるかな~?』
バーに男たちが入ってくると、俺はあっさりと捕まった。逃げようともしないし、暴れもしなかった。俺なんて、本当にくだらない人間だったんだな……って、今更後悔しても遅いか。
「ふふっ……」
情けなさ過ぎて笑みがこぼれる。
だが、俺が連れて行かれる直前、瑞希さんが俺のポケットに何か入れた。
「え?」
「死にたくなければこの薬を飲みなさい」
「瑞希さん?」
瑞希さんは何もなかったかのように俺から離れる。
なんだ? 薬って……。
ポケットの中には確かにカプセルが入っている。これを飲めって、飲んだらどうなるんだ……?
……わからないけど、もしかしたら瑞希さんは俺を救ってくれようとしているのかもしれない。
苦しまないで死ねるような毒だったら……。これは賭けだ。
残虐に殺されず、最後は安らかに眠りたい。
俺はポケットに入っていたカプセルを、口に入れて飲みこんだ。
「……はれ?」
飲んでしばらく、男たちに運ばれていた俺だが、いつの間にか気を失って――。
「ええ、ありがとうございます、ミスターEPIC。でも……まだ面接は終わりじゃありません。これからも気を引き締めて頑張りますわ」
りえかさんはカメラに向かってお辞儀した。
ミスターEPICはりえかさんがミホさんと面識があったことを知っていた……?
だからわざわざ残酷な殺し方で……?
『松山クン、何を考えてるのかわからないけど、次の質問をするから、ちゃんとしてよね~?』
「ちっ……」
まだ面接は終わりじゃない。多分……残りが1人になるまで、この殺人ゲームは終わらねぇってことかよ。
「次の質問はなんだ?」
御堂がミスターEPICに質問する。
『まぁ、今度は普通の質問だよ。ずばり、今までの人生で打ちこんできたものは何か――。一般の企業でもこの質問はあるから答えられるよね?』
普通の質問。確かにそうだ。普通の企業の面接でも聞かれることだろう。
だけど俺はそれに対する答えを持っていない。
大学時代に何をやった? 引きこもって懸賞生活だ。ゼミなんて最低限しか出席してないし、大学内に友人もいない。彼女もいなければ、バイトもしてない。はっきりいって、大学に入ってから尚更人と接することが皆無になっていたのだ。
普通の質問にすら、俺は答えられないのか……。ここまで生き残ってきたが、終わったな。
『さぁ、誰から行こうかなぁ?』
りえかさんはモデルの仕事の話をし、瑞希さんは秘書だったときの仕事内容を語った。キャットも御堂も、大学在学中の出来事を話していた。――最後に残ったのは俺だ。
『今まで元気だった松山クン。キミがラストだね。どんな面白い話をしてくれるのかな?
ははっ、今から楽しみだよ~!』
ミスターEPIC、悪ぃが俺の話なんて面白くねぇよ。
仕方ない。ここで終わりだ。俺が今まで打ちこんだことは……。
「ない」
「ほぇ? あれ~? 今の幻聴かなぁ? 『ない』って」
キャットがわざとらしく聞きなおす。俺は先ほどよりも大きな声で言った。
「ないんだ。打ちこんだことなんて、何も! 本気で取り組んだことも、必死で頑張ったことも、俺の人生で一度もないんだよ!!」
大声でわめき散らす俺を、みんなは呆然と見つめる。
「……なんだって簡単にできた。苦労なんてしなくても、何事もうまくいった。人間関係がなくたって、問題なかった。そんな人生に疑問さえ抱かなかったんだ! ……だからこの面接を受けて、初めて自分の命が危なくなって、ようやく今までの生き方が間違いだったと知った。だから俺は生き残って、生まれ変わりたいと思った……でも、それも無理だよな。
みんなとは違って、俺には何もない。それこそ死んだシナガワや川勢田さんや東さん、ミホさんの方がきっと……」
ぐっ、と拳を握ると、俺は頭を垂れた。
りえかさんの合図で多数決が始まる。選ばれたのは――俺だ。
『はい! 不採用に決定したのは松山ヒロアキクンだね! じゃ、みんな~、彼を連れて来てくれるかな~?』
バーに男たちが入ってくると、俺はあっさりと捕まった。逃げようともしないし、暴れもしなかった。俺なんて、本当にくだらない人間だったんだな……って、今更後悔しても遅いか。
「ふふっ……」
情けなさ過ぎて笑みがこぼれる。
だが、俺が連れて行かれる直前、瑞希さんが俺のポケットに何か入れた。
「え?」
「死にたくなければこの薬を飲みなさい」
「瑞希さん?」
瑞希さんは何もなかったかのように俺から離れる。
なんだ? 薬って……。
ポケットの中には確かにカプセルが入っている。これを飲めって、飲んだらどうなるんだ……?
……わからないけど、もしかしたら瑞希さんは俺を救ってくれようとしているのかもしれない。
苦しまないで死ねるような毒だったら……。これは賭けだ。
残虐に殺されず、最後は安らかに眠りたい。
俺はポケットに入っていたカプセルを、口に入れて飲みこんだ。
「……はれ?」
飲んでしばらく、男たちに運ばれていた俺だが、いつの間にか気を失って――。