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文字数 1,732文字
この中で一番怪しいのは……Kさんだ。だってバタフライナイフを持っていたし、そのことをみんなに隠していた。Jさんもどうやら私と同じ考えだったみたいで問いかける。
「Kさん、なんであんな武器を持ってたの? みんなにも言わず……そのナイフを使って、革のバンドを取ることだってできたはずだ」
Kさんはしばらく無言を続けたが、はぁと一息つくと話出した。
「ナイフは最終手段に使うつもりだった。俺たちはDCの言う通り、悪人を見つけ出せば助かる。が、自分がもしその悪人だったら?」
Kさんは最初からナイフを持っていたから……自分で自分が信じられなかったのかもしれない。でもまだわからない。もしかしたらこの部屋に来るまで、誰かがポケットに忍ばせたのかもしれない。私たちは記憶がない。自分が誰かもわからない。生き様も知らない。何をしてきたのかも。
「だったらゲームを続けましょうよ。全員の素性が明らかになれば、悪人が誰かわかる」
Sくんはそう言うけど、Aちゃんが首を振った。
「誰かを選ぶと、またお薬を飲むんでしょ? それでハズレの人が出たら……その人が死んじゃうよ!」
Aちゃんの言う通りだけど、だったらどうすればいいの? まだ時間は少しある。ババ抜きをする前に、みんなで話し合いをすべきだ。
「みんなは自分の正体を知りたい?」
私が問いかけると、KさんとAちゃんは知りたいと言った。
「俺はなんで武器を持っていたのかわからない。しかも使い慣れていたみたいだ。Nの背中に向けて投げたら、見事に刺さったからな」
私はNちゃんの亡骸を見つめる。背中に刺さったバタフライナイフ。これだけ見たら、Kさんは人を殺したことがあるように見える。じゃあ、他の3人は?
Sくんは高校生くらいだけど、高校生でも人を殺すなんて事件はある。
Jさんだって、今は記憶がないから怖がっているだけで、実は裏の顔が……という可能性があるし。
Aちゃんに限ってが未知数すぎる。さっきDCが言った通り、事故の原因を作ってしまったとか、他にも……子どもだけど、同じ年ごろの子どもならば殺すことだって可能だ。
それでもAちゃんは泣きそうなのをずっと、ずっと我慢して私に言った。
「わたしも知りたいです……。もしかしたらお父さんやお母さんを殺してるのかもしれないです。もしそうだったら……ぐすっ」
自分の正体を知りたくないと言ったJさんとSくんも意見を述べる。
「俺は……とりあえず生きて帰りたい。だから自分の正体なんてどうでもいいんだ。他に悪者が出てきて、それで解決すれば……」
Jさんの意見は自己防衛というか、なんというか。自分だけ生き残ればいいということか。私はちょっとそんなJさんを軽蔑した。気持ちはわからなくもないけど、それを素直に言ってしまうなんて。じろりとにらむと、Jさんは身を縮ませる。
それに対してSくんははっきりしていた。
「オレは自分の正体がはっきりしていようがしてなかろうが、自分を持ってる。だから自分の正体はどうでもいい。もし、ババ抜きで負けて、悪者という正体がバレても、それはそれで仕方がない。興味がない。大人しくDCに殺されるよ。だけど気になるでしょ? みんな。自分の素性や、みんなの素性を。なんでここに集められたのかとか」
ともかく、進まなくてはいけないようだ。犠牲が出ても、私たちはこのゲームを続けない限り、脱出することはできないのだから。
時計を見ると、10分の位置に針がある。次の親はJさんだ。仕方ないといった感じでカードを切ると、私たちに配る。私はそのとき、Nちゃんが持っていたナイフを思い出した。
「Aちゃん、Nちゃんのナイフ、取れる?」
「う、うん」
AちゃんがNちゃんの手にしていたナイフを取ると、もう一度同じように指示をした。自分の革バンドを切って、この部屋の逃げ場を探すようにと。ババ抜きと同時進行で探せば、ちゃんとゲームにも参加したってことになると思ったから。
今回はKさんからスタートだ。みんな1枚ずつカードを引いていく。Aちゃんはみんながカードを引いている間に、腕のバンドを取ろうと必死だ。私も男性陣がカードのやり取りをしている間、Aちゃんのバンドを切ろうと必死に手伝った。そして……。
「Kさん、なんであんな武器を持ってたの? みんなにも言わず……そのナイフを使って、革のバンドを取ることだってできたはずだ」
Kさんはしばらく無言を続けたが、はぁと一息つくと話出した。
「ナイフは最終手段に使うつもりだった。俺たちはDCの言う通り、悪人を見つけ出せば助かる。が、自分がもしその悪人だったら?」
Kさんは最初からナイフを持っていたから……自分で自分が信じられなかったのかもしれない。でもまだわからない。もしかしたらこの部屋に来るまで、誰かがポケットに忍ばせたのかもしれない。私たちは記憶がない。自分が誰かもわからない。生き様も知らない。何をしてきたのかも。
「だったらゲームを続けましょうよ。全員の素性が明らかになれば、悪人が誰かわかる」
Sくんはそう言うけど、Aちゃんが首を振った。
「誰かを選ぶと、またお薬を飲むんでしょ? それでハズレの人が出たら……その人が死んじゃうよ!」
Aちゃんの言う通りだけど、だったらどうすればいいの? まだ時間は少しある。ババ抜きをする前に、みんなで話し合いをすべきだ。
「みんなは自分の正体を知りたい?」
私が問いかけると、KさんとAちゃんは知りたいと言った。
「俺はなんで武器を持っていたのかわからない。しかも使い慣れていたみたいだ。Nの背中に向けて投げたら、見事に刺さったからな」
私はNちゃんの亡骸を見つめる。背中に刺さったバタフライナイフ。これだけ見たら、Kさんは人を殺したことがあるように見える。じゃあ、他の3人は?
Sくんは高校生くらいだけど、高校生でも人を殺すなんて事件はある。
Jさんだって、今は記憶がないから怖がっているだけで、実は裏の顔が……という可能性があるし。
Aちゃんに限ってが未知数すぎる。さっきDCが言った通り、事故の原因を作ってしまったとか、他にも……子どもだけど、同じ年ごろの子どもならば殺すことだって可能だ。
それでもAちゃんは泣きそうなのをずっと、ずっと我慢して私に言った。
「わたしも知りたいです……。もしかしたらお父さんやお母さんを殺してるのかもしれないです。もしそうだったら……ぐすっ」
自分の正体を知りたくないと言ったJさんとSくんも意見を述べる。
「俺は……とりあえず生きて帰りたい。だから自分の正体なんてどうでもいいんだ。他に悪者が出てきて、それで解決すれば……」
Jさんの意見は自己防衛というか、なんというか。自分だけ生き残ればいいということか。私はちょっとそんなJさんを軽蔑した。気持ちはわからなくもないけど、それを素直に言ってしまうなんて。じろりとにらむと、Jさんは身を縮ませる。
それに対してSくんははっきりしていた。
「オレは自分の正体がはっきりしていようがしてなかろうが、自分を持ってる。だから自分の正体はどうでもいい。もし、ババ抜きで負けて、悪者という正体がバレても、それはそれで仕方がない。興味がない。大人しくDCに殺されるよ。だけど気になるでしょ? みんな。自分の素性や、みんなの素性を。なんでここに集められたのかとか」
ともかく、進まなくてはいけないようだ。犠牲が出ても、私たちはこのゲームを続けない限り、脱出することはできないのだから。
時計を見ると、10分の位置に針がある。次の親はJさんだ。仕方ないといった感じでカードを切ると、私たちに配る。私はそのとき、Nちゃんが持っていたナイフを思い出した。
「Aちゃん、Nちゃんのナイフ、取れる?」
「う、うん」
AちゃんがNちゃんの手にしていたナイフを取ると、もう一度同じように指示をした。自分の革バンドを切って、この部屋の逃げ場を探すようにと。ババ抜きと同時進行で探せば、ちゃんとゲームにも参加したってことになると思ったから。
今回はKさんからスタートだ。みんな1枚ずつカードを引いていく。Aちゃんはみんながカードを引いている間に、腕のバンドを取ろうと必死だ。私も男性陣がカードのやり取りをしている間、Aちゃんのバンドを切ろうと必死に手伝った。そして……。