3-4

文字数 1,296文字

「早すぎですよ、ふたりとも」
「ま、オレはまたGWLで遊べて楽しいけどな」

 しんみりしそうになったとき、男子ふたりが追いついたおかげでボクは気を取り直した。

「じゃ、写真撮ろうっか! リズの遺影だよ!」
「……遺影?」
「そ!」

 キャラクター――今日はウサギーか――が待っている場所で、4人並んで写真を撮る。
 リズはこれからアンダーベースで処刑される。ボクも一か月後には過労死。これはリズだけじゃない。ボクの遺影でもあるんだ。

 写真を撮り終えると、いよいよボクらはできたばかりでまだ関係者以外立ち入り禁止のサイバーガーデンへと向かう。

 サイバーガーデンは『ネオトーキョー』をコンセプトとしている。入口には大きな『Cyber Garden』と書かれたアーチ。そのたもとではARで案内してくれるAIが設置される予定。『Kabuki-Cho』と書かれた看板や建物たちは、夜、ネオンをまとう。

「今日のメインイベントはここ! サイバーガーデンのど真ん中にある、『サイバータワー』だよ!」
「だから、アンダーベースっていうのは?」

 カナメのツッコミに、ボクは余裕で返す。

「ふふん、サイバータワーには地下通路があるの。そこからアンダーベースにつながってるんだよ」

「その『アンダーベース』について、まだ何も説明されてないんですってば」

 ツクモも少しイラついたように尋ねる。仕方ない。リズにも説明しないといけないからね。

「アンダーベースっていうのは、処刑ショーを行うところなの。今、メインを張っているアルデバラン、リゲル、シリウスっていう処刑チームがいてね。リズにはその処刑ショーのメインキャストをやってもらいたいの」

「メインキャスト……?」
「そ。つまり、惨殺される役」

 ボクがあっさり言っても、怯える様子はない。
 一度死ぬって決めたとき、その覚悟は決まっていたのか。
 よくブレないな……。リズって結構頑固なのかなぁ?

「キャットさん、よく本人の前で言えますね。逃げられるかもしれませんよ?」
「でもシロ、GWLに入っちゃった時点で、逃げられなくないか?」

 そりゃそうだ。ここには四方八方監視カメラや盗聴器etc…が仕込まれている。この場所にプライバシーなんて正直ない。だから、本当はボクの動向もユウキサンたちが見ようと思えば見られるはず。なのに、放置されているのは、普段の監視役、つまりボクが留守だから。

 いつも借金をカタにいいように扱われているボクが、まさか手のひらをかえして遊び呆けているなんて思わないだろうなぁ。

「だけどただアンダーベースに行くのはつまらないから、最後にサイバータワーを楽しんでいこうよ!」

「サイバータワーって、どんなアトラクションなんですか? 見たところ、ただのタワーですけど……」

「んーと、一番てっぺんから垂直落下する絶叫系? って聞いてるけど」
「試運転してるの? 事故らない?」
「それは大丈夫! バッチリ! だから、行こう!」

 ツクモとカナメに手招きすると、ボクはリズの背を押した。

「もう逃げられないからね?」
「……」

 リズはボクを見て、何か言いたそうな表情を浮かべたが、何も口には出さなかった
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