After the dream

文字数 667文字

「ふうん、御堂がねぇ……ともかく、久しぶりに連絡ありがと」

 ユウキはそう言うと、部屋に備え付けてある緊急用のEPIC特別電話を切る。

「誰からだ?」
「青葉さん」

 青葉――。EPIC特別捜査課の元刑事か。と言っても、実際はEPIC社のスパイで、警察の内通者だったわけだが。

 あの決戦の夜から1年。今は刑事をやめて探偵になったとか言ってたっけ。しかし、今更何の用事だ? しかも聞こえたのが『御堂』という因縁のある名字だ。

「御堂がどうしたって?」
「なんでも若返りの薬を発明して、施設にいるじーさんばーさんたちを若返らせてるらしい。さらに、DCにいた催眠術師の柊さんも一緒だって」
「はっ……なんでそんなことを?」
「さぁ? でもEPIC社としては、若者が増えることは喜ぶべきことなんだけどね。GWLは年齢層関係なく楽しめるけど、動き回るのってやっぱ若者だから」
「だけど、そんな理由じゃないだろ。御堂たちが牛耳っているこの国はEPIC社に目をつけているからな。政治家には勝てん」
「若返ってるから政治家ってわけじゃないんじゃない? 他にやりたいことがあるとか」
「例えば?」
「うーん、新興宗教を作る……とか? オレにも想像つかないや」
「ユウキに想像がつかないんなら、俺にもわからん」
「そーだねー。あ、ヒロアキ」
「ん、お前も」

 曲がっていたネクタイを直してもらうと、俺もユウキの傾いていたタイピンを直す。本当に、こいつとは腐れ縁になったもんだ。

 俺たちは、先の見えない不安と戦うよりも、今楽しむことを考えていたい。
 何気なくそんなことを考えた時間だった。
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