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文字数 1,914文字

「……ん」

目を覚ますと、真っ白な部屋にあるベッドへ横になっていた。
俺、死んだのか……?
でもなんかおかしいぞ。俺の心臓はドキドキと動いている。

「……あら、気がついた?」
「え……瑞希さん!? なんでここに!? っていうか、ここ、どこですか!?」

ポットからいい香りがする。ハーブティーか。
それを紙コップに注ぐと、彼女は俺によこした。

「EPIC社の医務室よ。ともかくこれを飲んで少し落ち着いてちょうだい」

言われた通りハーブティーを飲むが、頭の中は大混乱だ。
俺はみんなに落とされたはずだ。でも、瑞希さんからもらったカプセルを飲んで、気を失って……。

「み、瑞希さんはなんでここに?」
「私もあなたと同じよ。あなたの後に不採用にされた」
「あんたが不採用になるわけないじゃないですか!」
「私の場合は『不正』が発覚したの。EPIC社とのコネがあったというね。実際その通りだけど」
「……あんた、一体何者なんだ!? それになんで俺たちは生きてるんだ!?」
「私……伊藤瑞希はEPIC社会長の秘書です」
「か、会長秘書!? ってことは、ミスターEPICは……」
「ええ、EPIC社の次期会長よ」

次期会長だと? あの声のトーンや手から見て、若いとは思っていたけど……。

「今回の面接は、ある目的のために仕組まれたの」
「ある目的……?」

「EPIC社の会長になるには、自分の弱みを全て消さなくてはならない。要するに、敵対勢力となりうる人物の粛清。それと、自分の片腕……補佐を務める人物の選択。松山くん、あなたは確かに不採用になった。でも、あなたひとりだけが会長補佐の候補だったのよ」

「俺が会長補佐の候補って……。EPIC社と俺、共通点がなさすぎますよ! 小さい頃からグローバルワンダーランドなんて嫌いだったし、遊びに来たのだって数回しか……」

「そうでしょうね。でも、会長はあなたを指名したの。クロスワードの筆記試験を見事突破したあなただけをね」

「え? あれって他の人間には……」

「出されていない問題よ。他に正解者もいなかった。ただ、面接に来ていた人間には、『特別選抜枠』とだけ告げた。『一般受験者にはクロスワードの問題が出されたけど、あなたは特別だ。ぜひ面接に来てほしい』とね」

「俺が会長補佐って……。なんでそんな話になってるんだよ。俺なんて、ただの引きこもりだぞ? 人間関係だってうまく行ってないし、経験してることだって少ない」

「それでも会長はあなたを選ぶつもりよ。最後の試験をクリアしたらね」
「最後の試験……?」

瑞希さんは壁掛けテレビの電源をオンにした。
映っているのは見慣れた光景。先ほどのバーだ。
りえかさんとキャットと御堂の3人が落ち着かない様子で映っている。

「3人は罪を犯している。誰が一番重い罪を背負っているかというものよ」
「罪、ですか?」
「あなたに見せてあげるわ。3人の罪をね」

瑞希さんからクリップで留められた紙を渡される。

【御堂孝之助――次期会長両親暗殺容疑。
        政治家である祖父に頼み、暗殺集団を雇用】

【カトリーヌ・マリア・戸叶――EPIC社ハッキング、情報流出
               損害額8000億】

【奉 りえか――モデルという肩書を利用したスパイ
        暗殺集団のひとりでもあり、次期会長の命を狙う】

「あ、あの3人、こんなことしてたのか!?」

「残っているメンバーだけじゃありませんよ。死んだ人間も全員、何らかの罪を犯しています。次期会長は、会長になる前にこの分子たちを抹殺しなくてはならない。なぜなら、EPIC社の会長になるならば、彼らの抹殺以上の闇にも手を出していかなくてはなりませんから」

「それって都市伝説になってるようなことですか? 例えば、園内で人身売買が行われてるとか、麻薬密売とか……」

「そう受け取っていただいて結構です。さあ、松山くん。あなたに最後の質問です。あなただったら、誰を落としますか?」

「落とすって……誰が一番の罪人かってことですか?」
「そうね」
「……あの、これって自分を不採用にするっていうのでもいいんですか?」
「どういう意味?」

瑞希さんが怪訝な顔をする。
俺は真剣に、瑞希さんへ言った。

「俺は、ここで自分を落とします。こんな狂った会社になんて勤めたくない。それにもう誰も蹴落としたくはないんです」

「……ぷっ」

「え?」

「あははっ!! さっすが松山クン! 期待通りの答え、ありがとう。小学生の頃から変わってなくって、オレ、感動で泣きそうになっちゃったよ~!」

「ちょ、ちょっと待て、なんでお前がこんなところにいるんだよ……


                              シナガワっ!!」
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