2-5
文字数 1,178文字
「ここから先は、どちらか先に用意した人の勝ちです! では、スタート!」
ソフィさんは僕の目の前に移動する。テレポートかと思うくらいに俊敏に。僕の首をつかむと、のどぼとけの下、鎖骨の隙間をぐっと押さえた。息はなんとかできるけど、苦しい。
「ドウイウコト? なぜ岡サンはアナタを助けたノ?」
「し……知らない! 僕は何も知らないんだ! パスポートを手に入れたのも偶然! 本当は僕じゃなくて『田楽』って人が来る予定だった!!」
ソフィは疑ったままではあるが、一時的に僕から手を離した。これじゃ埒が明かない。僕は本当に何も知らなかった。麻薬密輸のことも、何もかも。ソフィは多分、僕を殺すことに躊躇しないだろう。秘密を知ってしまったから、消されて当然。そしてうまく会長や社長に取り入れば海外に逃亡……。ん? ちょっと待て。今、すごく重要なヒントを僕は……。
「ソフィ、このパスポートは誰に?」
「ボス……会長のMr.アキクニです」
僕らはみんな、会長や社長からパスポートをもらっている。それにこのアトラクションの協賛は四菱商事。要するに、この殺人劇をすべて仕組んだのは……。
「ソフィ! 本当に死ぬべきなのは、僕らじゃない! 会長と社長だ! あいつらは多分……麻薬売買から足を洗いたいとか、縁を切りたいから、社内の関係者を殺そうと考えたんだ。だとしたらつじつまが合う!」
「……そうデスネ。でしたら生きてここを出て、ふたりを殺さないとデス。……カルテルのメンバーとして」
「だったら一緒に……」
「イエ、アナタには死んでいただきマス。秘密を知ったら生きて帰さない。どこのファミリーでも同じデショウ?」
ソフィは隠し持っていたのか、太もものガーターベルトから小さいナイフを取り出す。護身用に持っていたのか。ソフィさんはナイフを手に、僕へと近づいてくる。
……一瞬助かったかと思ったけど、そうは簡単にいかないか。やっぱり僕は甘かった。首の頸動脈を切るのか? それとも腹部をえぐるのか? 怖くて目をつぶる。できれば痛くないように……ソフィにそうお願いしたら、叶えてくれるだろうか? 命乞いをしたら、もしかして助けて……くれそうにはないな。彼女の目は鷹のようだ。小さいネズミを狩る鷹。
仕方ない、諦めよう。そう思った瞬間だった。
「すみません! 彼を殺すわけにはいかないんですよ。彼こそが……『EPICなゲスト』ですから」
ソフィの身体が倒れる。その後ろにいたのは……。
「せい……くん?」
彼の手には光る透明なナイフ。それがソフィの背中をぶすりと奥まで刺さっている。なんで彼が? 今までずっと手を出してこなかったガイドの彼が、どうして僕を助ける?
「ナルミチさんは自己評価が低すぎるんですよ。もう少し自分に自信を持ってください。次期社長」
こいつ、僕の正体を知ってるの? 僕は思わず目を擦った。
ソフィさんは僕の目の前に移動する。テレポートかと思うくらいに俊敏に。僕の首をつかむと、のどぼとけの下、鎖骨の隙間をぐっと押さえた。息はなんとかできるけど、苦しい。
「ドウイウコト? なぜ岡サンはアナタを助けたノ?」
「し……知らない! 僕は何も知らないんだ! パスポートを手に入れたのも偶然! 本当は僕じゃなくて『田楽』って人が来る予定だった!!」
ソフィは疑ったままではあるが、一時的に僕から手を離した。これじゃ埒が明かない。僕は本当に何も知らなかった。麻薬密輸のことも、何もかも。ソフィは多分、僕を殺すことに躊躇しないだろう。秘密を知ってしまったから、消されて当然。そしてうまく会長や社長に取り入れば海外に逃亡……。ん? ちょっと待て。今、すごく重要なヒントを僕は……。
「ソフィ、このパスポートは誰に?」
「ボス……会長のMr.アキクニです」
僕らはみんな、会長や社長からパスポートをもらっている。それにこのアトラクションの協賛は四菱商事。要するに、この殺人劇をすべて仕組んだのは……。
「ソフィ! 本当に死ぬべきなのは、僕らじゃない! 会長と社長だ! あいつらは多分……麻薬売買から足を洗いたいとか、縁を切りたいから、社内の関係者を殺そうと考えたんだ。だとしたらつじつまが合う!」
「……そうデスネ。でしたら生きてここを出て、ふたりを殺さないとデス。……カルテルのメンバーとして」
「だったら一緒に……」
「イエ、アナタには死んでいただきマス。秘密を知ったら生きて帰さない。どこのファミリーでも同じデショウ?」
ソフィは隠し持っていたのか、太もものガーターベルトから小さいナイフを取り出す。護身用に持っていたのか。ソフィさんはナイフを手に、僕へと近づいてくる。
……一瞬助かったかと思ったけど、そうは簡単にいかないか。やっぱり僕は甘かった。首の頸動脈を切るのか? それとも腹部をえぐるのか? 怖くて目をつぶる。できれば痛くないように……ソフィにそうお願いしたら、叶えてくれるだろうか? 命乞いをしたら、もしかして助けて……くれそうにはないな。彼女の目は鷹のようだ。小さいネズミを狩る鷹。
仕方ない、諦めよう。そう思った瞬間だった。
「すみません! 彼を殺すわけにはいかないんですよ。彼こそが……『EPICなゲスト』ですから」
ソフィの身体が倒れる。その後ろにいたのは……。
「せい……くん?」
彼の手には光る透明なナイフ。それがソフィの背中をぶすりと奥まで刺さっている。なんで彼が? 今までずっと手を出してこなかったガイドの彼が、どうして僕を助ける?
「ナルミチさんは自己評価が低すぎるんですよ。もう少し自分に自信を持ってください。次期社長」
こいつ、僕の正体を知ってるの? 僕は思わず目を擦った。