2ー6

文字数 1,171文字

 そうだ、伊藤だ。伊藤がEPIC社が気になるって言ったから、僕はここに連れてこられたわけで。将来と無理やり向き合わされなきゃいけなくなったわけで。伊藤のせいだ。僕は伊藤の巻き添えになっただけだ。

 そんな伊藤は……どう思ってる? 僕はそっと伊藤の思考を読み取る。

『EPIC社……ここに入ればオレの生きがいが見つかるのか?』

 僕と同じことを考えてる? 僕は机を叩いた。

「伊藤! お前、こんな主君に仕えたいと思うのか!? いきなり人を拉致して脅迫するようなやつらだぞ!? 生きがいなんてどうでもいいだろ! どうせ人間はいつか死ぬんだぞ!?」

「シロ、お前、オレの思考を読んだな!?」

 伊藤は驚いたような顔で僕を見つめる。それをいさめたのがユウキさんだった。

「ケンカしないのー。まぁ、オファーを受ける、受けないは任せるよ。ただし、最終試験は受けてもらいたい。それをクリアしたら、逃がしてあげるよ。クリアできなかったら死んでもらうけど」

「……オレたちを殺せるとでもお思いですか?」

 伊藤が歯ぎしりしながらユウキさんをにらみつける。伊藤はユウキさんを主君として認めていない。だけど、EPIC社で働くこと……『生きがい』については興味を持ってるってところか。
 敵意をむき出しにしている伊藤に、ヒロアキさんが冷静に告げる。

「殺せるよ」

 どこから出てくるんだ、その自信は。
 僕らはそんな簡単に殺されるような人間じゃない。特殊な家系に生まれた、特殊な人間だ。普通のそこいらにいる雑魚と一緒にするな!!

「おーおー、怒ってる、怒ってる」

 ユウキさんが僕を見て楽しそうに声を上げる。僕の後ろのファイルが入った箱が、超能力で浮かび上がる。力の暴走だ。

「まぁまぁ。試験をパスすれば選択は自由なんだし。とりあえず受けてみてよ」
「どんな試験なんですか」

「一次試験……戦闘はパス。二次試験はここにある膨大な資料の中から、俺とユウキの履歴書を探し出すことだ。ふたりで協力して……な」

「履歴書?」

 履歴書を探すだけ、か? なんでそんな事務仕事みたいなことを……こんなの試験にすらならないじゃないか。いくら膨大な資料があるからと言っても、僕の残留思念を読み取る能力があれば、楽勝だ。伊藤だけならできないかもしれないが。

「さ、時間は1時間だよ。今からあそこの時計の針が12を回るまで。時間になったら毒ガスが噴き出すからね。よーい、どん!」

「え!? もう始めるのか!?」

 焦る伊藤。やるしかない、やれってことか。毒ガスだったら、超能力で物体を壊したりすることがたやすくできない。考えたな。

「ちょうど時間だ。薬が効き始めるはずだな」
「じゃ、オレらは出口で待ってるよ~☆」

 そうユウキさんが言うと、僕らは気を失う。まさか……僕らがGWLで食べたものの中に、時限式の睡眠薬でも混ざってたのか……?
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