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文字数 1,001文字
暗い通路を抜けると、出たのはGWLのエントランスだった。
そこで、ユウキさんとヒロアキさんが手に紙を持って待っていた。
「うっわ、本当に懐かしいなぁ。これ、ヒロアキが受けた試験のときに使った履歴書!」
「ふたりとも、ご苦労だったな。実は……資料室に置きっぱなしになっていた履歴書、どこにあるか探すのが面倒くさくてな。かといっても外部の者やバイトに探させるわけにはいかなかったし……」
楽しそうにしているユウキさんと、申し訳なさそうにするヒロアキさん。でも、これで僕らのミッションはクリアできたってことだ。
「ふたりとも、それでEPIC社に入るかどうか、決めた?」
「いや……それは……」
言葉を濁して僕を見る伊藤。そうか、僕が主君だって言ってるから、僕がどうするかで決まるのか。僕の決定で、伊藤の運命も決まる……。
「伊藤は働きたいんだよね。伊藤の家は実力主義でコネが使えない。就活しないとどうなるの?」
「高校を卒業したら家を追い出されるからな。仕事見つけないと、路頭に迷うかな」
「ふうん。だったらここで決まっちゃったほうが伊藤のためにはなるんだ」
「だ、だからってシロが妥協する話じゃ……」
遠慮する伊藤に、僕は淡々と言った。
「EPIC社の業績はいい。レジャー施設の中で唯一黒字を出しているテーマパークだ。海外に支社もあるし、永久就職とはいかなくても、最初入社するならアリかもね。面倒くさい就職活動なんてやってられないでしょ。ただでさえ今日は面倒くさかったんだし」
「まぁ、ふたりとも焦らなくていいよ。まずはEPIC社をよく知ってほしい。これ、スペシャルフリーパスだよ」
ヒロアキさんが僕らにICカードをくれる。スペシャルフリーパス。いつでも何時でも入園できるパスポートだ。
これをくれるってことは、もう少し考える余地はあるってこと……かな?
僕がホッとしていたのを見たのか、ユウキさんが毒を盛る。
「っていうか、顔認証登録しちゃったからね。君らオレらから逃げられないよ? これから他の企業に根回しして、『こいつらオレらんでーす!』って言って回るからね~っ♪」
「それはないでしょ」
伊藤が呆れたようにつぶやく。
外はもうすっかり夜。パレードの時間なのか、空に花火が上がる。
僕らの未来。それは不確定であやふやなものだけど……何となく、僕の耳元で風がささやく。
『この夢と希望と幻の国が、僕らの新しい遊び場だ』と――。
そこで、ユウキさんとヒロアキさんが手に紙を持って待っていた。
「うっわ、本当に懐かしいなぁ。これ、ヒロアキが受けた試験のときに使った履歴書!」
「ふたりとも、ご苦労だったな。実は……資料室に置きっぱなしになっていた履歴書、どこにあるか探すのが面倒くさくてな。かといっても外部の者やバイトに探させるわけにはいかなかったし……」
楽しそうにしているユウキさんと、申し訳なさそうにするヒロアキさん。でも、これで僕らのミッションはクリアできたってことだ。
「ふたりとも、それでEPIC社に入るかどうか、決めた?」
「いや……それは……」
言葉を濁して僕を見る伊藤。そうか、僕が主君だって言ってるから、僕がどうするかで決まるのか。僕の決定で、伊藤の運命も決まる……。
「伊藤は働きたいんだよね。伊藤の家は実力主義でコネが使えない。就活しないとどうなるの?」
「高校を卒業したら家を追い出されるからな。仕事見つけないと、路頭に迷うかな」
「ふうん。だったらここで決まっちゃったほうが伊藤のためにはなるんだ」
「だ、だからってシロが妥協する話じゃ……」
遠慮する伊藤に、僕は淡々と言った。
「EPIC社の業績はいい。レジャー施設の中で唯一黒字を出しているテーマパークだ。海外に支社もあるし、永久就職とはいかなくても、最初入社するならアリかもね。面倒くさい就職活動なんてやってられないでしょ。ただでさえ今日は面倒くさかったんだし」
「まぁ、ふたりとも焦らなくていいよ。まずはEPIC社をよく知ってほしい。これ、スペシャルフリーパスだよ」
ヒロアキさんが僕らにICカードをくれる。スペシャルフリーパス。いつでも何時でも入園できるパスポートだ。
これをくれるってことは、もう少し考える余地はあるってこと……かな?
僕がホッとしていたのを見たのか、ユウキさんが毒を盛る。
「っていうか、顔認証登録しちゃったからね。君らオレらから逃げられないよ? これから他の企業に根回しして、『こいつらオレらんでーす!』って言って回るからね~っ♪」
「それはないでしょ」
伊藤が呆れたようにつぶやく。
外はもうすっかり夜。パレードの時間なのか、空に花火が上がる。
僕らの未来。それは不確定であやふやなものだけど……何となく、僕の耳元で風がささやく。
『この夢と希望と幻の国が、僕らの新しい遊び場だ』と――。