文字数 840文字

 Jさんが、私たちのデスクの真ん中にあるデスクの上に置かれた四角い何かを指さす。

「取っても大丈夫かな?」

 私が聞くと、Nちゃんが腕を伸ばす。

「あたしの魔力で何か当ててあげるよ! ふおおっ!」
「……え、と、取ればいいんですよね。はい」

 NちゃんではなくAちゃんが素早くそれを取ってしまった。Nちゃんはがっくりと肩を落とす。

「これは……トランプ?」

 Aちゃんから渡されると同時に、プチンと部屋に音が響いた。テレビ画面が明るくなる。カメラの前に映っていたのは人ではなく、どこかで見たようなぬいぐるみだった。

『みなさんようこそ! 悪夢と絶望と真実の国へ!』

 これもどこかで聞いた声がある……。それでも頭にもやがかかっていて、思い出せない。なんだったかな、この声にぬいぐるみ。

「ちょっと待って。あたしに悪夢と絶望を見せるなんて……ふふっ、そう簡単に行くかな? あたしは地獄の……」

『Nちゃんは黙ってて! 今、ボクはみんなに大事な話をしているんだからね!』
「うっ……」

 ぬいぐるみに注意されたNちゃんは、ぐっと下唇を噛む。Kさんのキツネのような目が彼女に刺さってる……。そうだよね、私たちはここから出るためのヒントをどうにかして聞かないといけないんだから。

『ボクはDC(ディーシー)。キミたちには今からゲームをしてもらうよ。と、言っても難しいことじゃないからね? Yさんが持っているトランプで、ババ抜きしてもらいま~す!』
「ババ抜き?」

 Sくんが怪訝な顔をする。こんなところでよくわからない面子でババ抜きなんて、意味が分からない。DCはさらに説明を続ける。

「ババを最後まで持っていた人が負け! だけど、それだけじゃない。その人の秘密を教えてあげるというチャンスもついてるからね。今のみんなは記憶喪失状態だ。自分が何者か、知りたいよね?」
「……」
「どうかした? Mさん」

 無言で何か考えているような彼女に声をかける。

「自分が何者か、知りたいとは思います。ですが、本当にそれで終わるんでしょうか?」

「――え?」
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