第57話 退屈なら居眠りを趣味に

文字数 1,806文字

今日は日曜日 日曜日でも普通通りに教室に来る。
そしていつも色々なことを考えたり空想したりする。こんな時間が一番好きだ。 

雑草のように生きてみたいと思う事がある。
教室の前には駐車場がある。桶川駅から川越へ向かう街道に面している。
10台くらい止められる駐車場がある。駐車場はアスファルトで固められている。
西側の隣家との境には低い塀がある。
その塀の内側はコンクリートの車止めになっている。以前そこは、花壇だった。
金木犀の木が10本くらい立っていた。
季節になると花壇にはチューリップの花が咲いていた。
その木と花の間には雑草が生えていた。
その雑草の中には、いい香りのするハーブも生えていた。
3年前、その花壇はコンクリートで固められた。駐車場の見通しは良くなった。

いつの日からか塀とコンクリートのわずかな隙間から、雑草が顔を出す。
取っても取っても1週間位するとまた新しい芽が出てくる。

春でも、夏でも、秋でも、冬でも、取っても取っても新しい芽が出てくる。
その雑草の中に香りのいいハーブも顔を出す。
引っこ抜いて鉢に植えて水と肥料を上げる。
鉢植えのハーブのほうは枯れてしまう。
雑草は踏んでも、切ってもすぐにまた生えてくる。
水をやらなくても、肥料をやらなくても元気で生きている。

人間の側からみれば何にも役に立たないのに
きれいでもないのに、邪魔にされているのに、お構いなしで生きている。
悩みもなく、夢もなく生きている。
雑草の立場に立って考えてみると、どんな小さな雑草も光合成で酸素を出している。
その雑草を小さな虫が食っている。枯れると土の栄養分になる。
少しは役に立っている。生えてくると汚く見えて、わずらわしい。切ってしまう。
時々だがそんな雑草のように強く生きてみたいと思う事がある。

退屈な日にはどうでもいいような考えが浮かぶ。

何日か前。お昼休みに居眠りをして面白い夢を見た。
70過ぎて仕事をやめた。
これからは自由に余生を過ごそうとリュックに酒とつまみを入れて旅に出た。
・・・1日目、海辺で、酒を飲んだ。
・・・2日目、山へ登り酒を飲んだ。
・・・3日目、繁華街の片隅で酒を飲んだ。

明日はどこへ行こう。行く所が思いつかない。それ以上やることがない。
3日で飽きてしまった。やることがなく、退屈で、退屈で、退屈で。
こんな生活もういやだ。・・・・・・・・・・・・・そこで夢が覚めた。

生きている限り働いてみたい。今まで以上にこの仕事を大切にしようと思った。
お金は少しあれば充分だから働きたいと思った。
でも、いつかは体が衰えて仕事をやめなければならない日が来るだろう。
これで仕事がなかったらどう過ごすのだろう。考えられない。
何日か、教室に訪ねてきたのは70代の女性。先日ご主人が亡くなったそうだ。
これからはみんな自分でやらなければならないと言っていた。
パソコンで作るものはみんなご主人に任せていたそうだ。
ご主人は、以前この教室に習いに来ていたといっていた。
だから、私にも教えて下さいといってきた。私の役割はまだまだ残っていそうだ。

本当に働けなくなったら思い出話でも書いてみよう。思い出はかなり在庫がある。
見てくれる人と面白おかしく話をしながら生きていこう。
そんな生き方もあるなと思いました。

自営業になってから、仕事と休みの区別がつかなくなってしまった。
日曜日も教室に来てしまう。どうしても体も心もが教室に向いてしまう。
何か見えない力に引っ張られているようです。(蚊ではない)
団塊の世代の働き蜂の習性から抜け出せない。何かしていないと安心できない。
妻とドライブでも行けばいいのにと思うがどうしても興味が湧かない。
仕事をする事にストレスを感じない。だから仕事と言うより教室は娯楽の殿堂だ。
面白い事が一杯あって。やる事色々あって、あっという間に1日過ぎてしまう。

日曜日の仕事はどんどん進む。どんどん進むとストレスがなくなる。
日曜日には居眠りができる。仕事途中の居眠りはこの上なく気持ちがいい。
パソコンは私の趣味であり遊びでもある。
アレェ~!そういうことは私は毎日遊び呆けている事となる。
それじゃ、遊びで人からお金とっている?

とすれば私の仕事はゆすり!たかり!遊び人???
いいか、また面白いこと考えてお客様を笑わせよう。
パソコンの講師というよりホストに近い感覚だ。
ラフな格好で楽な気持ちでやっている。パソコン教室は水商売だ。

こう考えた時から運命が上向いた。

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