第24話 迷い猫からもらった幸せ

文字数 1,718文字

私は今まで猫を飼った事がない。嫌いなわけではないんです。
マンション暮らしが長いせいか飼う習慣がないんです。

ある日。教室に白い猫がやってくるようになりました。
教室のガラス戸の入口の所でしばらく中の様子を眺めていきます。
毛並みは白、目は左が金色で右が銀色です。
珍しいなと思ってみていました。野良猫か飼い猫かは分かりません。

1日のうち10回くらいやってきます。朝から晩まで、教室の近くにいます。
入り口のところで、ガラス越しに「ニャー」となきます。
入り口のところで丸くなっていじ~っとしている時もあります。
ドアを開けるといったん退いてくれます。
ドアを閉めるとまた戻ってきて丸くなっています。
迷い猫かなと思ってそのままにしています。

この頃私に慣れてきたようです。私が外に出て行くと足に絡んできます。
寝転んで遊びを催促します。私は猫と遊びません。
猫がこんな知らない他人に慣つくのだろうか?

去年の12月頃から毎日教室の前に猫が来るようになった。
幸運の招き猫ならいいなと思っていました。
最初はちょっと見かける程度だった。
いつの日か妻が水や餌を与えるようになった。

1月の頃には、1日の半分くらいの時間を教室の前にいた。
2月の頃には、教室の入り口の前にずっと座るようになった。
3月の頃には、他の野良猫がうろうろしていた。
4月の頃には、お腹が大きくなっていた。
5月の頃には、お腹が急に小さくなっていた。
どこかに子猫を産んだようだ

教室の前に来る時間が半分位になった。
朝7時半頃、教室に行くとシャッターの前で待っている。
シャッターを開けると私の足にまとわりついてくる。
1時間ほど教室の前にいて消えていく。
そして又1時間ほど教室の前にいて裏の藪の中に消えていく。
裏の方には錆付いたトタン張りの廃屋がある。
周りは雑草で覆われている。時々そこから出てくる白い猫を見た。

教室が終わり夜10時には家に帰る。
シャッターを閉めると自転車で帰る私のあとをついてくる。
10mくらい先に道路がある。車が往来している。
そこで猫はいったん立ち止まり帰る私を見送ってくれる。
そんな日々が毎日続いていた。

ある日の朝
親猫が教室の前でぐったりと横になっていました。
お腹の白い毛がオレンジ色にべっとりぬれていました。
お腹の辺りが半分以下にへこんでいました。
間違いなく子猫を生んだんだなあと思いました。
教室の前に来る頻度が少なくなった。
子猫の世話で忙しいのだろうと思っていました。
わずかに上げるお情けの餌で子猫を育てている。
少しかわいそうになってきました。
この日から、猫用の餌を買ってきて朝晩あげるようになりました。
一度餌をあげれば責任が出てきます。今は毎日あげています。

しばらくは子猫をどこで生んだかわかりませんでした。
親猫は教室に来ると横になって寝そべってぐったりしていました。
親猫のおっぱいは赤く腫れあがっていました。
子猫におっぱいを吸われた跡がはっきりわかりました。
赤くなっているおっぱいが4つありました。

私にあまりじゃれつかなくなりました。
親になったんだなあと思って見ていました。
その日からこの白い猫が身内のように思えました。

親猫は動物病院に連れて行き不妊中術をしました。
子猫のほうも、もし私に慣れてくれば同じようにします。
なんかの縁です。この猫の家族を守りたいと思っています。
もし猫が望めばパソコンも教えます。ほんのりと幸せな気分になりました。

猫を見ると癒される。幸せな気分になれる。
猫は「餌をを願いします」という目的だけで生きている。
すりすり寄ってくる。私をじっと見つめる。ゴロゴログルグルと喉を鳴らす。
しっぽを絡ませてくる。こういう一つ一つの仕草を愛おしいと感じる。

朝6時 教室に行くと私の自転車の音でゲージから飛び出してくる。
帰る時間になると教室の前で姿勢を正して座っている。

妻と諍いを起こした後でも、猫を見ていると落ち着いてくる。
妻もこの猫を見習ってもらえないかな~。
私はこの猫から幸せを貰っている。

この子猫は10歳になる。私も猫も同じ余命ならいいと思っている。
うん? 私のほうがちょっとだけ長生きをすれば、猫のお墓が作れるのか。
健康に注意して頑張ろう。ボケないように頑張ろう。






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