第18話 残された時間は少ない

文字数 1,843文字

年々1年が速くなってきているような気がします。
もしかしたら残された年月が少なくなってきているせいでしょうか
時間の流れの<速い><遅い>はその人の心理状態かもしれませんね。
1時間くらいで済まそうと思ったことでも気が付いたら2時間経っていた。
「あれ、もうこんな時間!」ということが多くなっています。
こちらは気持ちの持ちようで感じられる時間です。

時間なんか早くても遅くてもこの先の人生には大きな変わりありません。
時間のことは気にしないでこれからは楽しい人生を送ることが優先です。
好きなことをして、好きなものを食べ、気の合った人たちと一緒に旅に行く。
そんな人生が送りたいですね。その為には体の健康と脳の健康が一番です。
体のほうはそれぞれが気を付けてください。
脳の健康はこの教室でトレーニングをしてください。
これからは時間を気にしないで楽しい人生を送りましょう。

パソコンの中にはそのヒントが無限にあります。
特にインターネットは人生のガイドにもなります。
同じような仲間を作る。わからなければ知っている人に聞く。
知っていることは教えてあげる

パソコンができない高齢者は社会から取り残されていくような不安があります。
近くに誰か知っている人がいればいいですが、なかなか他人は頼れません。
気軽に聞ける人が必要です。そんな教室を目指しています。
パソコンができない方でも、必要な事がその時その場でできるように手伝います。

教室を開業して22年経過しました。
修了した人まで含めるとかなりの人数になります。
その家族・友人を合わせるとおそらく何万人にもなると思います。
その中には過去にその道の専門家がたくさんいます。
その気になれば、いい仕事ができる人は大勢います。
人数が多くなるほどその集団の力が大きくなります

税金で困ったことがあればあの人が詳しい。
電気のことならあのおじいちゃん。リフォームならあの人がいいなど。
お互いがボランティア感覚で助け合う集まりになっていくのが理想です。
そして趣味や性格が気の合う人たち5~6人で一つのグループをつくり
一緒に麻雀したり、バス旅行に行ったり、懐かしの映画の鑑賞。
たまに飲み会や歌声喫茶もいいですね。いろいろ楽しいことが浮かんできます。

老後は若い世代に何も臆することなく明るく楽しく過ごしたいですね。
人はいつからでも変身できます。
パソコン教室にはいろいろな人がやってきます。
受講生名簿を眺めるといろいろな光景が思い出せます。

あるとき、60歳で薬品会社を定年退職した人がやってきた。
「これから大工になろうと思っているんだ」
「ええ!これからですか」
「何するにもパソコンくらい出来なくてはね」
「職業訓練所に行ってさ、大工の見習いから始めるよ」
「すごいですね」
「これからは何か手に職付けておかなければね」さらりと言っている。
気負いが感じられない。まるで二十歳の青年のようでした。

86歳のおばあちゃんには感動した。
「私にもパソコンできるかしら」
「ええ、花のイラスト入れたり、インターネットを見たりできますよ」
「そういうのは興味ないのよ!基礎からしっかりやりたいの!」
「わかりました」
「それでは基礎からやってみましょう」
「この先なんの役に立つかわからないでしょ」 
私なんかまだ若造に思えてくる。

一番泣けたのは中年のサラリーマン。
1ケ月に2回来る人だった。
「1ケ月に2回では、前の所を忘れてしまいませんか」
「そうなんですけどね」
「忙しいんですか?」
「実は1日100円貯めているんですよ。1500円貯まったら来るんですよ」 
胸から熱いものがこみ上げてきました。
1秒1秒を大切にしなければならないと思いました。
人にはいろいろな人生があります。パソコンで少しでもお役にたてば嬉しいです。

すべての人が教室の歴史を刻んでくれました。
その気になれば全員の方の思い出を日記に書ける気がします。
残念ながら今はその時間はありません。
生徒が少なくなり、廃業したら教室をテーマにした小説を書いてみます。

人はそれぞれ私以上の歴史を抱いています。
その人との会話からその人の人生が想像できます。
今は忙しくてもいつか仕事がなくなる日が来ます。
そんなに遠くない未来だと思う。その時はゆっくり思い出しながら書くつもりです。

画家が花や風景を描写するように、私は人の生きざまを原稿用紙に書いてみたい。
その時がきたら思いつくままに作品を書いてみたいと思います。
一流の作家のようにはなれませんが三流作家なら趣味として楽しみながら書けます。

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