第88話 夫婦喧嘩の悔しさ情けなさ

文字数 2,324文字

妻にはいつも言われています。妻は私を酷評します。
「あんまりできない事を書かないほうがいいよ」
「できないから、こんな風にしてみようという理想を書いているんだよ」
「みんなあんたができてるると思っちゃうよ」
「そんなことはないよ。みんな分かっているよ」
「ちょっと偉そうすぎるよ、できもしないくせに」
「俺を軽蔑するのはお前だけだぞ、みんな褒めてくれるのに」
「みんなあんたの本当の姿を知らないからだよ」
「お前は俺のこと知っているのか」
「何でも知ってるよ。冷蔵庫のカレーを夜中に全部食べちゃったでしょう」
「食べてないよ。自分が食べて忘れてんだろ~」
「もうすぐ、90kgを超えちゃうよ。着るものが無くなるよ」
「島村には3Lがあるだろう。買って来いよ」

「ね、本当のあんたはこれなんだから。夜中に小説なんか書くのはいい加減にやめな」
「いいだろう、俺の趣味なんだから。夜中だったら誰にも迷惑かからないだろう」
「時々、教室で居眠りしているよ。少しは仕事もまじめにやんなよ」
「居眠りしていないよ。考えているんだよ。目をつむって考えているんだよ」
「タバコだってプカプカ吸ってさ、お金が無駄だと思わない」
「昔の作家はみんな煙草をふかしながら書いていたんだよ」
「あんたは、作家のカッコだけを夢見て真似しているだけじゃない」
「タバコはボケ防止だよ。ビタミンニコチン?はドーパミンという脳内物質がでるんだぞ」
「嘘言わないでよ。小説なんて書いているからそういう風に理屈っぽくなるんだよ」
「でもさあ、何もしなけりゃボケちゃうよ。別に女遊びしているわけじゃないだろう」
「屁理屈ばっかり言わないでよ。あとさあ、トイレは立っておしっこしないでね」
「うるさいな~。ちゃんと座ってやっているよ~、見ていないくせに」
「周りが汚れるんだよ、そうやって死ぬまで嘘をついてなよ」
「お前のそういう所が嫌なんだよ。少しは成長しろよ」

「それから、お風呂はたまには入ってね。少し臭いよ」
「風呂に入らなくても死にはしないよ。それよりたまには俺を先に入らせろよ」
「あんたさあ、お風呂の中で頭を洗うでしょ。やめてね。浴槽に髪が一杯だよ」
「洗ってないよ。第一俺には髪なんてないだろ~、見ろよ」
「はいはい。つまんないもの書いていないで、仕事だけは頑張ってね」
「お前こそ、50年も前の俺の初恋に焼きもちを焼くなよ」
「焼きもちなんか焼いてないよ。今でも心の中で思っているのが嫌なんだよ」
「14歳の時だよ。憧れのマドンナだって今じゃ、しわだらけの婆さんだよ」
「あんただって醜いジジイだよ。小説に若い頃の写真を載せないほうがいいよ」
「なんで、多少は物語の参考になるだろう」
「みんな今のあんただと思っちゃうよ」
「思うわけないだろお~、みんな分かっているよ」
「鏡見た?今のあんた凄いよ。あれじゃあ詐欺だよ」
「うるさい~。むこうに行ってろ。もう写真はのせないよ」
「今日の夕飯ないからね。どっかで食べてきな」
「悔しい~~~~~~~。あのカレーまた今日の夕飯だったのか」

「あとさ、きになるんだけどさ。あまり同じことをクドクド書かないほうがいいよ」
「何のこと? あ、俺の日記をまた見たな」
「よ~く飽きずに同じことをダラダラかけるね。ボケてきたんじゃない」
「どこが同じなんだよ。何をみたんだよ」
「エッセイだか、オットセイだか知らないけど、言っている事みんな同じだよ」
「そうかなぁ、できるだけ内容はダブらないようにしてるんだけどなぁ」
「あれじ1杯の味噌汁をお湯で増やして10杯にしているだけだよ」
「よ~く、そんなことが平気で言えるな。自分で書いてみろよ」
「あたしだけだよ、思ったことを言ってあげるのは」
「あ~あ、お前の話を聞くと書く気がしなくなっちゃうよ」

「もうちょと、気のきいたことが書けないの」
「俺は趣味でやってんだよ。時間があればもっといいことも書けるよ」
「もうやめな。あんたはパソコン教室の事だけやってればいいんだよ」
「馬鹿、教室だっていつ終わるかわかんないだろ~」
「今月は家賃が払えないよ。今月も預金を下ろすよ」
「お前も少しは節約しろよ。家計簿でも付けろよ」
「あんたもそんなことをしてないで、生徒募集チラシの事でも考えな」
「お前と話すと、ほんとうにストレスたまるよ。たまには誉めてみろよ」
「あんたさぁ、たいした能力がある訳じゃないんだから、背伸びするのはやめな」
「うるせえ、お前も人の日記を見るのはやめろよな」
「馬鹿じゃない、じゃあなんであんな事書いてるの?人に見せてどうなるっていうの」
「だから趣味だって言っているだろ~」
「みんなにほめてもらいたいだけなんでしょ」
「う~ん、お前ってなにもわかってないな、もう少し成長しろよ」
「わかった、わかった。今日も仕事だけは手を抜かずに頑張りなよ」
「悔しい~~~~~もう書かないよ」
「書いてもいいけど、誤字脱字を注意しな。仮にもパソコン講師なんだからさ」
「どこ!どこ!どこ。どの作品の何ページだった?」

「あとさ、今日はプラスチックのゴミ出しだよ、ちゃんとやってね」
「なんで俺がやるん、自分でやれよ。今から日記を書くんだよ。忙しんだから」
「1日くらい書かなくっていいよ、あんたの日記なんか誰も見やしないよ」
こんな会話がキリがなく続きます。

私の家庭ではありません。仮にこんな夫婦がいたらの話です。
コント作家も経験してみようかなと思っただけです。
こんな夫婦がいたら面白いだろうなっていう話です。
これはあくまでもコントです。妻に見られたら大変です。
老夫婦なんてこんなもんかなって思って書いてみたんです。
こんなコントも、受けるかどうか試してみたかったんです。

私は幸せです。夫婦はうまく行っています。本当です。
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