第61話 地獄や極楽は自分の心

文字数 1,154文字

今日は日曜日それでも朝から教室に来ている。日曜日はまるで極楽のようです。
一人で空想にふける時間がこの上なく幸せに感じます。
ここには10年の自分の歴史がある。壁の張り紙一つ、床の傷一つに思い出がある。
エクセルで作った受講者名簿はいつまで見ていても飽きない。
すべての人が私の歴史を刻んでくれた。全員の方の思い出を日記に書ける気がする。
残念ながら今はその時間はない。自分の事でせいいっぱいの毎日だ。

いつか仕事がなくなる日が来る。そんなに遠くない未来だと思う。
人はそれぞれ私以上の歴史を抱いている。
その時はゆっくり思い出しながら書くつもりです。
早くその日が来ないかと待ち遠しくなってきている。

その人との会話からその人の人生が想像できる。
印象が深い人がいる。印象の薄い人もいる。どんな人も頭の中に印象が残っている。
画家が風景を描写するように私は人の生きざまを書いてみたい。
言葉や文字はそれを使う人たちの共通認識事項です。
文字を組み合わせて文章にする。その文章を組み合わせて小説にする。
誰でもできるその組み合わせで、素晴らしい作品や感動する文章が出来上がる。
優れた作家は文字の組み合わせの名人なのです。職人技なのです。
私も練習を積み重ねて。優れた作家の真似をしてみたい。

今私はこの教室が生きがいとなっている。生活の糧にもなっている。
体が動かなくなったら思いつくままに作品を書いてみたい。
次の目標が見つかって人生がまた楽しくなってきた。

昔読んだ「青春の門」を読んでいる。
書くより読んだほうが面白い。やっぱり自分には届かない世界がある。
その力の差に物を書くのが嫌になってきた。
でもへこたれない。自己満足で十分だ。何年か後に自分の作品を読んで楽しめればいい。
記憶は消えていくが、記録ならその年齢の時の思い出が蘇る。
どんな分野でも、一流と二流がある。高望はしない。失望するだけだ。
人生を楽しみながら書くにはそれ以下の三流でもかまわない。
一流の人は毎日苦労していると思う。二流ならば楽しみながらできそうだ。
三流の作家は収入が期待できない。そのために生活費は今から少しずつ蓄えておく。

西の窓から陽射しが強い。眩しい程の光だ。カーテンを閉めるのは惜しい。
コンビニで缶ビールとつまみを買ってこよう。
午後の陽射しを浴びながらビールを飲んで、好きな本を読見ながらうたた寝をする。
だまっていれば、今晩家でまた飲める。(アル中ではない!)
キ~ン・コ~ン・カ~ン・コ~ンと教室の終業の鐘が鳴る。
今から家に帰るまでの時間が、自由気ままの極楽の時間だ。
飲もうが食べようが誰にも文句は言われない。
こんな怠惰な過ごし方が肥満を作る。
やがて減量の地獄の苦しみがやってくる。

ふとったりやせたり。泣いたり笑ったりの人生が面白い。
地獄極楽はみんな自分の内にある。

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