第25話 感動の朝 白猫の子供たち

文字数 1,804文字

ついに、6月10日 感動の朝を迎えた。

朝教室の前に行くと小さな子猫が4匹遊んでいた。
お腹が小さくなってから1カ月経っていた。
親の白猫は私の足にすり寄ってくる。
子猫は遠くから警戒している。

2匹は白い猫だった。1匹はちょっと三毛猫だった。
もう一匹は白にグレーがはいった猫だった。
初めて人間を見たようで、私に近付いてこない。
近付いて行くと、クーラーの室外機の後ろに隠れてしまう。

親猫が1匹の子猫を首に咥えて私の所へ連れてきた。
抱っこしたら震えている。両手の中に入る程度の子猫だった。
親猫とは遊びたくないがこの子猫だったら遊びたい。
手から離すとダンボールの陰に隠れてしまう。
親猫が私の所に連れ戻す。それでも又逃げてしまう。

私は、まだこの子猫達に信用されていない。
子猫のほうから慣れてくるまで待つしかない。
しばらくして、親猫と共に裏の藪の中に入って見えなくなった。
子猫が近付いてきたら一匹は家に連れて行こうと思う。
教室に来ている人にも里親になってもらおうと思っている。

子猫達は可愛かった。あどけない顔をしていた。
もしあの子猫を飼えたら、生活が変わるような気がする。
孫ができたような気持だった。家族がもっと楽しいものになるような気がする。
人生が変わるような気がする。
子猫の顔を始めてみた時は感動で胸が震えた。
1か月近くもこの猫が一人(1匹)で育てて来たのだ。4匹とも元気だった。
あのわずかな餌で育ててきたのだ。

その親猫は仕事のように規則正しく私の教室の前に来いた。
お情けでもらえる餌を求めてじっと待っていた。
その栄養でおっぱいを子猫に上げていたのだ。

いつかは子猫を連れてくると思っていた。奥の藪で見え隠れする子猫を見た。
今までとは違う日々が始まった気がした。どこで生んだのか興味が湧いてきた。
裏の藪の中のトタン張りの廃屋の縁の下だろうと思った。

<朝の冒険!子猫の隠れ家発見>

今朝も3時に起床した。気持が浮ついている。
空が明るくなってきたら子猫の隠れ家を探したくなった。
朝5時半に家を出て教室に向かった。教室に6時前に着いた。
親の親猫がどこからか急いで走って近付いてきた。
そして私の顔を見て「ニャー」と言って藪のほうに向かう。
私を振り向きながら廃屋のある藪のほうに歩いていく。
親猫は一軒の廃屋の家の前で立ち止まった。
藪の中を見ながら、普段の鳴き声とは違う鳴き方をしていた。
「ゴロゴロニャア〜ン、グルグルグル」その泣き声に子猫が出てきた。

わ~、ついに子猫の隠れ家を発見した。
教室に戻って急いで帰ってカメラを持ってきた。

親猫は私が来るまで待っていてくれた。
子猫達は親猫のおっぱいにむしゃぶりついていた。
母猫は子猫の毛をなめている。

子猫はカメラのシャッターの音におびえて陰に隠れてしまう。
母猫はそれでもその場を動かずに私のほうを見ていた。
もともと私は猫が好きな方じゃない。一生に一度この猫だけだと思う。

子猫の発見から1週間以上経った。
親の白猫は裏の藪の中から規則正しく教室へ出勤してくる。
餌を求めて入り口にいる。餌を食べると藪の中へ消えていく。
そしてまた出勤をしてくる。帰ってくると胸の乳房が腫れあがっている。

時々縁の下から出て遊んでいる子猫の姿を見る。子猫もかなり大きくなってきた。
母猫と一緒に行った時だけ顔を出す。私一人だと廃屋の縁の下に隠れてしまう。

今まで、教室への出勤は7時半ごろだった。
子猫が生まれてから1時間早く教室に来るようになった。

猫の朝は早い。
遠くから足を忍ばせて望遠レンズで写真を撮る。
子猫は1ヶ月間を藪の中で暮らした。たった一匹のこの母猫に育てられた。

時々は親猫と子猫が一緒に教室の裏口まで来る。
親猫が私をニャーと呼ぶ。裏のドアを開けると4匹の子猫は逃げてしまう。

手の届かないとこまでいって振り向いている。遠くから私の姿を怪しげに見ている。
親猫が「ゴロゴロニャーン」と子猫を呼ぶが近付いては来ない。
まだ人間の顔に慣れていない。嫌われてもしょうがない。

今のままでは里親探しができない。
一匹は飼おうと思っている。3匹は里親を探そうと思っていた。
それでも近付いてこなければ仕様がない。
慣れてもらうために、毎朝藪に近づいて顔を出している。
子猫は首を横にして、怪しそうに私が去るまで見つめている。
安心させるために子猫に色々話しかける、

子猫に言葉は通じない。悩みの種はまだまだ続きそうだ。
悩みの種の数だけ幸せもできた。

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