第49話  また禁煙に挑戦すべきか

文字数 2,087文字

どうも自分は何かに挑戦していなければ落ち着かない。
仕事は十分忙しいがこの頃一日が暇に感じる。
まだやっていない新しいことに挑戦してみたい。
パイロットになりたいとか医者になりたいとかのできないことは諦める。
今の自分で努力を積み重ねればできる事がいい。
さらに達成した時の夢が描けるものがいい。

前に来た60歳の年配の方すごかったなあ。
会社を定年後、次は大工さんになりたい。
これから大工見習いの仕事を探すと言っていた。
考えてみれば自分もサラリーマンのあとパソコン講師になった。
似たようなもんかな。
夢っていうのは何でもありだ。とにかくそれに向かって努力すればいい。

次の夢を探すという事も楽しい作業のうちの一つだ。
とにかく楽しいものがいい。
楽しいものってなんだ。それは、夢中になれる事です。
夢中になれる事っていうのはたまには徹夜でしても嫌にならないもの。
毎日それについて1時間はやってみたいもの。一生続けられるもの。
できれば人から評価されるもの。極めたら人に教えたくなるもの。

こうして、思いつくままに考える事も面白い。
自分にはこれといった趣味がない。今後の趣味を考えるのも一つの方法だ。
毎日パソコンに向かっているせいか、考えた事が指から出てくる。
あまり頭の思考回路は使っていないような気がする。
色々な案内書の作成等も下書きなしで進めていく。
この点パソコンは便利だ。鉛筆、消しゴムはいらない。辞書もいらない。
ちょっと迷ったら、インターネットで調べられる。
思いつくままに書いてもまとめが楽だ。上や下への移動は一瞬でできる。

夜中にパソコンに向かっている。思いつくままに書き込んでいる。
なんか、やりたい事を箇条書きにして出してみよう。
そうだ。禁煙なんていうのも挑戦の一つになるのだろうか。
過去40回くらい挑戦した。3日坊主の時もあれば、3ヶ月続いた時もある。
禁煙はしたあとの一服がたまらなくうまい。
自分の禁煙は、うまいタバコを吸うためのようなものだった。

断食したあとのおも湯はこれで死んでも悔いはないというような美味さだった。
禁煙後のタバコは、そこまでは行かないが、かなりそれに近い。
どうしよう。どうしよう。また、禁煙に挑戦してみるか。

禁煙した後のパターンは決まっている。
何日か禁煙すると、なぜ禁煙なんかしているんだろうかと疑問に思う。
そうすると。
タバコを持っているだけならいいだろう。
・・・タバコを一箱買ってくる
ふたを開けて匂いを嗅ぐだけならいいだろう。
・・・といって口に咥える
口に咥えているだけならいいだろう。
・・・火を付けたくなる。
火をつけても吸わなければいいだろう。
・・・煙のいい香りがする。
吸っても、口の中だけならいいだろう
・・・口の中で煙をふかす。
吸い込んでも1本位ならいいだろう。
・・・1本吸う。これが実にうまい。
1本吸えば2本も3本もおんなじだ。
こうして以前のように戻ってしまう。

俺も悪いが友人も悪い。禁煙していると必ず冷やかしてくる。
「1本くらい大丈夫だよ」
まさにこれが悪魔の囁き。
「そうだよな」といって1本貰う。
30年も吸ってきたんだからいまさら止めてもしょうがない。
これでまた愛煙家に戻ってしまう。
このごろ、愛煙家は肩身が狭い。まるで犯罪者扱いのようだ。
人に迷惑かけているのだから犯罪者か。だめならいっそ禁煙法を作ってよ。
それなら罰金をとられるのが嫌だから絶対に禁煙できる。

ある日こんなことがあった。駅の構内の喫煙コーナーでタバコを吸っていた時だ。
近くを通りかかった30歳くらいの男が、通りすがりに言った言葉が耳から離れない。
「レベルが低いなあ~」と言われた。悔しい~

今までマイルドセブンを愛用していたけど
この間キャビン・ローストブレンドという新製品にライターのおまけが付いていた。
おまけにつられて買ってみた。おまけに弱いのは小心者の特長だ。
体に悪いのはわかっている。わかってても妻や子に注意されながらも吸っている。
金もかかる。体も臭い。人に嫌がられる。体に悪い悪い事ばかりだ。
昔はかっこよかったが今はかっこ悪い。家の中では妻や娘に怒られる。
ベランダで吸うと隣の赤ちゃんがせきをする。
車の中では禁止されている。道では恥ずかしくて吸えない。
教室ではなお吸えない。こんなに条件が悪いのに、やめられない。
こういう艱難辛苦を乗り越えながら吸っている。

よ~し、禁煙してみるか。その前にまず一服してから考えよう。
あああ、シマッタ。また吸ってしまった。本当に自分はレベルが低い。
石原裕次郎だって、高倉健だって、タバコを吸っている姿はかっこよかった。
政府だってタバコを勧めていたんだよ。なぜ時代によってこんなに評価が違うんだ。
喫煙は文豪のイメージだった。
芥川龍之介、夏目漱石、浅田次郎、安岡章太郎、谷川俊太郎、筒井康隆等ほとんどだった。
安部公房、斎藤茂吉、内田百閒などは煙草に纏わるエッセイや詩が多い。
まあ、それはそれとして、寿命まであと十有余年。
今無理して禁煙しても延命期間は2~3か月だろう。自分は今のまま行こうという結論になった。

いっそ禁煙法でも作って下さい。そうすれば絶対やめます。
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