第97話 人間関係を改善するために

文字数 1,779文字

私はだめな人間だった。たいして頭もよくないのに自意識過剰だった。
人をほめることをせずに、自分の自慢話ばかりしていた。
仕事は人一倍したが、性格が悪いために友人はできなかった。
妻や家族には怒ってばかりいた。幸せとは程遠い日常だった。

西暦2000年のキリのいい年だった。しかも50歳で切りのいい年齢だ。
会社をリストラで退職した。残り30年の人生は別の人生を過ごそうと考えた。
今までの人生を反省し、これからは生き方を変えてみようと思った。
「幸せな人生」とは何だろう。いくら考えても答えは見つからなかった。
他人の人生観を見て参考にしようと思い、多くの本を読んだ。
文学、哲学、心理学、幸せのノウハウ書をかなりの量を読んだ。
偉人の名言金言、著名な人の人生論、講演会の録音テープ。ラジオの朗読もかなり聞いた。
映画やドラマもインターネットから購入し、かなりの量を見聞きした。
気になった言葉や参考となる文章をパソコンの中に打ち込んでいく。
その項目は、1万件をはるかに超えた。その中から自分に足りないものを絞り込んでみた。

それを今までの自分とこれからの自分を考えながら、ヒントになる言葉を探し続けた。
今の私は世間に通用しない。会社でも近所づきあいでも人間関係のトラブルが多かった。
世の中の仲間外れになっている。自分は正しいと思っていた。なにか原因があるはずだ。
全て自分中心に考えていた。全ては自分の態度にあると考えられる。
とにかく自分の態度を変えてみたかった。真似できる事はやってみようと考えた。
そんな幾つもいっぺんにはできない。すぐにできそうな事を絞り込んだ。

多くの項目の中から、同じようなものを削除し、どんどん絞り込んでいった。
項目を絞り込む過程で「幸せな人生」の原理原則がある事に気が付き始めた。
それは、自分のためより人の幸せのためにに行動する事だった。
相手が幸せになれば、自分はその何十倍の幸福感を味わえるという事だった。
ちっぽけな自尊心が、すべての不幸につながっているという事に気が付いた。
まだ遅くはない。自分では気が付かなかった処世訓を絞り込んでいった。
いっぺんには実行できないので、最初は15項目に絞り込んだ。
身に付いた項目は、削除し次の新しい項目を追加すればいい。

恥も外聞もなくその処世訓を生活に取り入れた。
状況は少しずつ変わっていった。気持ちが楽になって来た。周囲が変わって来た。
今でもたいした人間ではないが、気持ちがだんだん平穏になってきている。
小さな日常の幸せを感じ始めている。

1 人に微笑みかけること、それは愛の表現であり、その人へのすばらしい贈り物となる。
2 感謝の心は幸福感やエネルギーが高まっていく。「ありがとう」をもっと素直に言おう。
3 穏やかな心は問題を解決する。人間の最大の罪は不機嫌である。けして怒らない。
4 人の為になる事を基本にすれば必ず成就する。人の為に生きてこそ人生には価値がある。
5 改善は、自問自答し続け、疑問を持ち続ける事だ。好奇心を失ってはならない。
6 知恵は絞ればいくらでも出てくる。誠実に謙虚に、そしてコツコツと熱心にやること。
7 できると思えばできる。できないと思えばできない。願いは実現する。奇跡が起きる。
8 考える、努力する、工夫する。失敗したらやり直せばいい。諦めずにもう一回試す。
9 間違いに気づいたら、素直に謝る。腹を立てぬ事。人を憎まぬ事。争わない事。
10 人の価値とはその人が得たものではなく、見返りを考えず与え与えたもので測られる。
11 相手に恥をかかせたり、傷つける事を言わない。謙虚な人は誰からも好かれる。
12 相手の言い分が間違っていても指摘しない。「そういう事ですか」と心から認める。
13 自分の事はいい。相手に関心を持つ事だ。相手の関心は自分自身の事だけなのだ。
14 人は誰でも私よりも何らかの点で優れている。見た目で人を判断しない事。
15 相手の話に口を挟まない。人間関係は聞く力にある。相手の話には熱心に耳を傾ける。

私はこれらを繰り返し暗誦した。トイレの壁にも貼り、心に蓄積させました。
身につくまで、意識して日常生活に取り入れました。
幸せは人から貰うものだという事がわかり始めてきました。

人それぞれみんな違います。各人の生活環境に応じて参考にして下さい。
一つでも誰かの参考になれば幸いです。

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