第105話  これからの人生!

文字数 1,019文字

小さな台風が来ている。外は雨。
さっき最後の生徒が帰っていった。
雨が止むまで、日記を書いてみよう。

平凡で小心で臆病な性格にふさわしい人生だった。
たいした事もなく、たいした感動もなく、たいした野心もない人生だった。
病気もせず、事故もなく、良い事もせず、悪いこともしなかった。
欲もかかず、浮気もせず、賭け事もせず、犯罪もせず正直に生きてきた。
まあまあともいえる人生だった。つまらない人生と言われればそんな気がする。
小説やテレビドラマのようなハラハラするような人生ではなかった。

ズルしてお金を稼ごうと思えばチャンスはあった。
いいなと思える異性もそれぞれの環境の中にいた。浮気のチャンスもあった。
人の悪事を見てみない振りもした。人の不幸に力を貸せない時もあった。
忘れたいほど恥をかいたこともあった。

小心者の私にできる精一杯の人生だった。
どんな場面でも、「青春の門」の主人公のようにはできなかった。
それでもこんな私の人生でよかったと思える。

あの時、別の決断をしていたら、どんな人生になったのかと妄想する。
一瞬の判断の間違いで、刑務所の塀の中ですごしたかもしれない。
もうすでに事故や事件で死んでいたのかもしれない。
予想もできない災害にあっていたかもしれない。
たった一瞬の決断の違いや判断で、運命は大きく変わっていたかもしれない。
悩みもあった、不安もあった。苦しみもあった、絶望もした。

それでも変な宗教に頼らず自分の判断でここまで来た。
その判断の回数は何万回以上あったろう。
でも自分なりに納得してここまで来たのだ。

生まれて今日まで、約27,000日間生きてきた。
本当に奇跡のような気がする。

そして今私は、74回目の夏休みを迎えようとしている。
もう心配は何にも要らなくなった。

危ないから車の免許は返納しよう。
これからは思いつくまま自由に生きていこう。
無気力で暇な人生だけはさけたい。
何でもいいからまた新しい目標を作ろうと思う。
目標を探し続ける事も、いい暇つぶしになる。
こうしてたわいのない思いを書くことも暇つぶしになる。
今の延長が一番安心できそうな気がする。

「高齢のパソコン講師!今も現役」

体が不自由になったら。頭がおかしくなったらその時はそれでいい。
またその時考える。
衣食住の心配はなさそうだ。
病院も介護施設も贅沢をしなければ、今までに蓄積してきたものでなんとか足りそうだ。

さあもう少しだ!明るく楽しく暮らしてみよう。
この教室も明日から3日間の夏休みだ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み