第6話 買い物の次にすること

文字数 765文字

 望に渡された財布に入ったお金で、メモしたものをすべて買うと、二つの袋にいっぱいになった。
 洋館に帰り着くと、言われた通り、呼び鈴を押さず、自分で玄関のドアを開けて中に入る。そして、リビングルームの前まで行って声をかけた。
「ただ今帰りました」
 すぐに中から声がする。
「お帰り。入って」

 ドアを開けると、望がソファから立ち上がったところだった。陽太が両手に提げた袋を見て言う。
「わぁ、すごい荷物になっちゃったね。あっちがキッチンだよ」
 望が、さっき朔が去って行った方向を指す。松葉杖をつく彼の後についてそちらに向かいながら、陽太は言った。
「この家、すごいですね」
 広くてお洒落な洋館は、中にいると、とてもここが日本だとは思えない。前を向いたまま、望が言う。
「そうだろ? ここは朔ちゃんの持ち物なんだよ。もとはイギリス人だかイタリア人だかが別荘として建てたものなんだってさ」
「そうなんですか」
 休職中だと言っていたが、あの若さで、こんな豪邸を持っているなんて、彼はよほどのお金持ちなのだろうか。
 
 
 キッチンも広々として明るく、とても使いやすそうだ。望が指示をする。
「食材は、ここの冷蔵庫に入れてね。それから、ベーカリーのパンも買って来てくれたよね」
「はい」
 帰ったら三人で昼食にするから、スーパー内のベーカリーで、適当に見つくろって買って来てほしいと言われたのだ。選ぶのはなかなか難しかったし、彼らの好みに合うかどうか自信がないのだが。
「じゃあ、パンはそこのテーブルに出してくれる? 隣にダイニングルームもあるけど、いつもここで食べてるんだ」
「はい」

「それで、次から次へと悪いんだけど」
 冷蔵庫を開けている陽太を見て、望が申し訳なさそうに言った。
「いえ」
「それが終わったらさ、二階に行って、朔ちゃんを呼んで来てくれるかな」
「え……」
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