第94話 緒川の疑問と頭の中がぐちゃぐちゃな朔とシャワーを浴びる望

文字数 645文字

 ドアまで送って行った望に、緒川が言った。
「霊園でお会いしたときから、ずっと不思議に思っていたんですけど、どうしてお墓の場所がおわかりになったんですか?」
「あぁ、探偵に依頼して調べてもらったんです」
「まぁ……」
 望の言葉に、緒川は驚きの表情を浮かべた。
「あまりにも朔ちゃんが辛そうで、このままじゃ一生立ち直れないんじゃないかと思って、せめてお墓参りが出来たらって」
「そうでしたか」
 神妙な顔をする緒川に、望は笑いかける。
「もっとも、費用は朔ちゃんが払ってくれたんですけどね」
 
 
 緒川を送り出して、奥に戻ると、朔はまだうつむいたまま、椅子に腰かけている。
「朔ちゃん、大丈夫?」
 朔が、涙に潤んだ目を向けた。
「大丈夫じゃない」
「え?」
「頭の中がぐちゃぐちゃで……」
 そう言いながら、顔を歪める。望は、静かに近づきながら言った。
「泣いていいよ。我慢しないで」
「ごめん、みっともなくて」
「そんなことないよ。全然」


 しばらく泣いた後、朔は頭が痛いと言って、ベッドで横になった。そのうち眠ってしまったので、手持無沙汰になった望はシャワーを浴びた。
 バスルームから出ると、朔は起きていて、ベッドの上でぼんやりしている。望は、濡れた髪をタオルで拭きながら尋ねる。
「朔ちゃん、頭痛はどう?」
「まだ、少し」
「薬、買って来ようか?」
「いや、それほどじゃない」
「そう。夕ご飯はどうする?」
「あぁ……」
 待っていても答えは返って来そうにないので、望は言った。
「外に出るのも面倒だから、ルームサービス頼む?」
「うん」
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