第99話 カフェの宣伝と望の誘いと応援したい気持ちはある朔

文字数 851文字

 だが、望は言う。
「もちろん、再開するからにはいろいろ考えてるよ。今まで通りじゃ駄目だってことはわかってる。
 だから、門のところに目立つ看板を立てたりして、入りやすいようにして、それから、陽太くんがSNSで宣伝してくれるって言ってる」
「そうなのか?」
「うん。僕は年の割にそういうのに疎いほうだし、最近じゃ滅多にスマホも見ないけど、陽太くんはけっこう得意みたいでさ」
「へぇ……」
「それに、陽太くんのおばあさんも、お友達や、パート先で宣伝してくれるって」
「ふぅん……」
 
 朔も、トーストにバターを塗り始める。望が、にこにこしながら言った。
「それでさ」
「あぁ」
「陽太くんには、引き続きカフェを手伝ってもらうことになってるんだけど」
 そんなところまで話は進んでいるとは知らなかった。望が、軽い調子で続ける。
「朔ちゃんも一緒にやらない?」
「……え?」

「別に、ガチで働いてもらいたいわけじゃないよ。気が向いたときに顔を出してくれたらうれしいなって。
 なんなら、何か食べに来てくれるだけでもいいんだ」
「いや、俺は……」
「駄目?」
「人と接するの、あんまり得意じゃないし、俺みたいな仏頂面したやつがいたら、店の雰囲気が悪くなるんじゃないか? せっかく来た女性客が怯えて帰るとか」
 望が笑う。
「そんなこと気にしてるの? そこはほら、僕と陽太くんのさわやかな笑顔でカバーするから大丈夫だよ」

 朔はコーヒーカップを口に運びながら、望を上目遣いに見る。
「なんだ、否定してくれないのかよ」
 不愛想なのは否めないにしても、ちょっと大げさに言ってみただけなのに。
「えっ、否定してほしかったの? 『そんなことないよ、朔ちゃんのクールな魅力に、女性客もメロメロだよ』とか?」
「馬鹿。とにかく、俺は遠慮するよ」
 今はまだ、そういう気持ちになれないし、いつかそういう気になるとも思えない。だが、もちろん、望を応援したい気持ちはある。
「それ以外のことなら、俺に出来ることがあれば協力するけど」
 望が、口を尖らせて言った。
「ちぇっ、つまんないの」
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