第52話 すき焼きの醍醐味と生卵と目玉焼きが苦手な朔
文字数 523文字
いつものようにチャイムを鳴らすと、朔が笑顔で迎えてくれた。今日は正月の三日だ。
朔が、まだ食べていないというので、雑煮の材料と、母が作ったおせち料理を持ってやって来た。それと、望の家では正月の定番となっている、すき焼きの材料も。
「さぁ、入って」
朔の部屋に来ることにもすっかり慣れた。望は、朔とともにキッチンに向かう。
「えぇっ、卵つけないの!?」
望は思わず声を上げた。さぁこれから、すき焼きを始めようというときになって、朔が卵はいらないと言ったのだ。
「うん、生卵は苦手なんだ」
「でも、甘辛い味のついたお肉を溶いた卵につけて食べるのがおいしいんじゃない。最後に味の移った卵をご飯にかけて食べるとおいしいよ」
それを聞いて、朔が、しかめっ面をする。望は今まで、それこそが、すき焼きの醍醐味だと信じて疑わずに生きて来たのだが……。
「じゃあ、目玉焼きも苦手?」
半熟の目玉焼きも望の好物なのだが。
「うん」
「黄身がカチカチになるまで焼いたやつだったら?」
「それもちょっと。火が通っていても、黄身と白身が別々になってるのは」
「へぇ、そうなんだ」
「でも、卵焼きとかスクランブルエッグは好きだよ」
「へぇ……」
朔のことは、まだまだ知らないことばかりだ。
朔が、まだ食べていないというので、雑煮の材料と、母が作ったおせち料理を持ってやって来た。それと、望の家では正月の定番となっている、すき焼きの材料も。
「さぁ、入って」
朔の部屋に来ることにもすっかり慣れた。望は、朔とともにキッチンに向かう。
「えぇっ、卵つけないの!?」
望は思わず声を上げた。さぁこれから、すき焼きを始めようというときになって、朔が卵はいらないと言ったのだ。
「うん、生卵は苦手なんだ」
「でも、甘辛い味のついたお肉を溶いた卵につけて食べるのがおいしいんじゃない。最後に味の移った卵をご飯にかけて食べるとおいしいよ」
それを聞いて、朔が、しかめっ面をする。望は今まで、それこそが、すき焼きの醍醐味だと信じて疑わずに生きて来たのだが……。
「じゃあ、目玉焼きも苦手?」
半熟の目玉焼きも望の好物なのだが。
「うん」
「黄身がカチカチになるまで焼いたやつだったら?」
「それもちょっと。火が通っていても、黄身と白身が別々になってるのは」
「へぇ、そうなんだ」
「でも、卵焼きとかスクランブルエッグは好きだよ」
「へぇ……」
朔のことは、まだまだ知らないことばかりだ。