第63話 泣きながら言いつのる望と消え入りそうな声で謝る朔

文字数 532文字

 子供みたいで恥ずかしいと思ったが、気持ちが収まらなくて、泣きながら、さらに言いつのる。
「いったい何があったのかって、心配で心配で。どこに行っちゃったのか、元気でいるのか、朔ちゃんにもしものことがあったらどうしようと思って、必死に行方を捜したんだよ。
 朔ちゃんが、前に××市に洋館を買ったって言ってたのを思い出して、それだけを頼りに苦労して捜したんだよ。蜂須さんと違って探偵なんて雇ってないから、ホントに大変だったんだよ!」
 だがそれでも、洋館のことを知っていたおかげで、探偵よりずっと早く、ここにたどり着くことが出来たのだ。
 あーあ、みっともない。陽太くんがいなくてよかった。
 そう思いながら、望はぐしゃぐしゃになった顔を両手でぬぐう。
 
 やがて、朔が消え入りそうな声で言った。
「ごめん……」
 辛そうな顔をされると弱い。望は、鼻をすすりながら続ける。
「運よく見つけられたからよかったけど、あのときの朔ちゃん、憔悴しきった様子で、ガリガリに痩せて」
 いったい何があったのかと、とても心配した。
「ガリガリ、だったか」
「そうだよ。今もあんまり変わってないけど」
「そうか……」
 うつむく朔に、望は聞く。
「何があったのか、やっぱり僕にも話してもらえないの?」
「それは……」
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