第18話 やるせない気持ちとすべった松葉杖と割れた食器
文字数 689文字
正直なところ、とても複雑な気持ちだ。いったい何があったのか、ずっと気になっていたものの、朔に辛い思いをさせたくなくて、聞くことが出来ずにいたのだ。
それなのに、いくらアクシデントがあったとはいえ、出会ってから日の浅い陽太に向かってあっさり打ち明けるなんて。自分はその程度の存在なのかと、やるせない気持ちになる。
だがもちろん、そのことを責めるつもりはない。自分はただ、朔のことが心配で、そばで支えたいと思ってここにいるのだから。
そんなふうに思っていたのだが。
望は、テーブルの上にまな板を置いて、椅子に座って野菜を刻んでいる。怪我が治るまでは、当分このスタイルでやろうと思っている。
陽太もあれこれ手伝ってくれるし、その日は、体調がいい朔も、向かい側に座ってサヤエンドウの筋を取っていた。
「さて」
すべて刻み終わったので、椅子を引いて、松葉杖に手を伸ばす。
「あっ、やりますよ」
重ねた食器を戸棚にしまおうとしていた陽太が、振り向いて言った。立ち上がろうとして力をかけた瞬間、杖の先端がすべって、望はバランスを崩した。
「わっ」
二本の松葉杖は、それぞれ別の方向に飛んで行き、床に当たって大きな音を立てた。
体勢を立て直す暇もなく、望は肩から陽太にぶつかり、そのはずみで陽太の手から食器が落ちて、派手な音を立てて割れた。陽太が、望の体を支えながら叫んだ。
「あぁっ!」
望も声を上げる。
「ごめん!」
そのとき、ガタンと椅子が倒れる音がした。見ると、朔がテーブルの向こうの床にうずくまっている。
「朔ちゃん?」
陽太が、素早く松葉杖を拾い集めて望に手渡してから、朔に駆け寄った。
それなのに、いくらアクシデントがあったとはいえ、出会ってから日の浅い陽太に向かってあっさり打ち明けるなんて。自分はその程度の存在なのかと、やるせない気持ちになる。
だがもちろん、そのことを責めるつもりはない。自分はただ、朔のことが心配で、そばで支えたいと思ってここにいるのだから。
そんなふうに思っていたのだが。
望は、テーブルの上にまな板を置いて、椅子に座って野菜を刻んでいる。怪我が治るまでは、当分このスタイルでやろうと思っている。
陽太もあれこれ手伝ってくれるし、その日は、体調がいい朔も、向かい側に座ってサヤエンドウの筋を取っていた。
「さて」
すべて刻み終わったので、椅子を引いて、松葉杖に手を伸ばす。
「あっ、やりますよ」
重ねた食器を戸棚にしまおうとしていた陽太が、振り向いて言った。立ち上がろうとして力をかけた瞬間、杖の先端がすべって、望はバランスを崩した。
「わっ」
二本の松葉杖は、それぞれ別の方向に飛んで行き、床に当たって大きな音を立てた。
体勢を立て直す暇もなく、望は肩から陽太にぶつかり、そのはずみで陽太の手から食器が落ちて、派手な音を立てて割れた。陽太が、望の体を支えながら叫んだ。
「あぁっ!」
望も声を上げる。
「ごめん!」
そのとき、ガタンと椅子が倒れる音がした。見ると、朔がテーブルの向こうの床にうずくまっている。
「朔ちゃん?」
陽太が、素早く松葉杖を拾い集めて望に手渡してから、朔に駆け寄った。