第103話 SNSのフォロワーが200人を超えたことと朔と望のBLっぽい写真

文字数 1,023文字

 貼られているのは、真顔の朔の横で、笑顔の望がピースサインをしているもので、「店長&店員♥」というキャプションまでついている。朔は抗議する。
「こんなの、聞いてないぞ。だいたい、俺は手伝うなんて言ってない」
 だが、望は平気な顔をして言う。
「だって朔ちゃん、『俺に出来ることがあれば協力する』って言ったじゃん」
「それはそうだけど、でも、こういうことじゃ……」
「あっ!」
 さっきから二人のやり取りを黙って見ていた陽太が、朔が話している途中で、突然声を上げた。
 
「何?」
 望が、陽太の手元のスマートフォンをのぞき込む。
「お店のために作ったSNSのフォロワーが200人を超えました」
「すごいじゃん! こんな田舎のちっぽけなカフェ、しかも開店前なのに。これも全部、陽太くんのおかげだよ」
「そうじゃないですよ。ほら、このコメント見てください」
「えっ、どれどれ。わっ、『店長さんも店員さんもイケメンで、会うのが楽しみ過ぎて開店が待ちきれません!』だって」
 嫌な予感がして、朔は椅子から立ち上がる。
「ちょっと見せてくれ」
 手を差し出すと、陽太が、そっとその手にスマートフォンを載せた。
 
「おい……」
 予感は的中した。朔の肩に頭を預けるように望が寄り添っている写真に、「満月のように明るい望さん(店長)と、新月のようにクールな朔さんは従兄弟同士です。満月(望)と新月(朔)、二人の名前が店名の由来です」という一文。
「陽太くん」
「すいません……」
 陽太が、怯えた目で朔を見る。すかさず望が言う。
「店名のことは本当だよ。僕が陽太くんに教えたの。自分で言うのもなんだけど、しゃれてるでしょ?」
 陽太が答える。
「はい、すごく素敵です」
「そういえばさ、陽太くんは、文字を逆にすると太陽だよね。わぁ、月と太陽ってすごくない?」
「おい」

 朔を無視して、二人は早口で話し続ける。
「それにしても、この写真、なんか恋人同士みたいじゃない?」
「これがいいんです。女性にはBLっぽいのが受けるんですから」
「へへっ、そう。あっ、ねぇ、看板だけじゃなくて、ここにも陽太くんの写真を載せようよ」
「えっ、僕はいいですよ」
「何言ってんの。陽太くんだって、ずっとバイトに来てくれるんでしょ?」
「そのつもりですけど」
「陽太くん、かわいいタイプだから、きっと陽太くん目当てのお客さんも来るよ」
「まさか」
「いや、そうだって。よし、うんとかわいい写真、僕が撮ってあげる。フォロワー、もっと増えるよ」
「おい……」
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