第42話 おでんとクリスマスイブの予定とほっとしたような微笑み

文字数 422文字

 それは、十二月に入って、最初に朔の部屋を訪ねた日のことだ。おでんの支度をしながら、望は、横からのぞいている朔に聞く。
「朔ちゃん、クリスマスイブはどうするの?」
 もしも予定がないのならば、部屋で一緒に過ごしたいと思っていた。だが、朔が言った。
「仕事だよ。年末は締め切りが早くなるから大変なんだ」
「それって、家でずっと絵を描いてるってこと?」
 もしそうならば、その間に料理を作って、朔に食べさせたい。せっかくのクリスマスだから、ケーキも用意して……。
 
「それが、ちょっと出かけるんだ。蜂須さんと、野山先生のところ」
 野山とは、朔の絵がブレイクするきっかけになった人気小説家の名前だ。
「そうなんだ……」
 がっかりしてうつむいていると、望の気持ちを察したのか、朔が言った。
「何もなければ、望と過ごしたかったけど……」
 望は、無理に笑って見せる。
「いいよ。その日は、クラスの友達にパーティーに誘われてるから」
「そうか」
 朔が、ほっとしたように微笑んだ。
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