第89話 驚く朔と緒川の話と面食らう望
文字数 653文字
向かい側に緒川万砂子、望と朔は並んで、コーヒーを前に座っている。松葉杖をつきながら、まだおぼつかない足で新幹線や在来線を乗り継いで来て、すっかり疲れてしまったので、やっと座ることが出来て、望はほっとしている。
緒川が、朔を見ながら言う。
「さっきお見かけしたとき、すぐに影森さんだってわかりました」
「え?」
朔が驚いて顔を上げる。
「あっ、ごめんなさい」
もともと優しげな表情が、笑うと目尻が下がり、憎めない顔になる。
「私、彼女とは幼稚園からの付き合いで、ナッちゃんマコちゃんって呼び合う仲だったんです。彼女が東京の大学に行ってからも、ずっと連絡を取り合っていて。
それで、こっちに帰って来たときも、すぐにお見舞いに行って、そのときに写真を見せてもらったんです。なんとなくそんな話になって、彼女、恥ずかしそうに『内緒よ』って」
そこまで言って、ふと彼女の表情が曇る。
「こんなこと、言っちゃってよかったかしら……」
朔は呆然としていて、とても何か言えるような状態には見えない。それで、すかさず望は言った。
「いいと思いますけど。ね、朔ちゃん」
緒川は、今度は目を見開いて望を見る。
「もしかして、望さん?」
今度は、望が面食らう。
「……えっ? そうですけど、なんで? 僕は菜月さんとは」
「ええ、知ってます。彼女が、会ったことはないけど、影森さんには望さんっていう仲のいい従兄弟がいて、よくその人の話をしてくれるって、楽しそうに」
「えっ?」
望は、思わず朔の顔を見る。朔が、菜月に自分のことを話していたなんて……。
緒川が、朔を見ながら言う。
「さっきお見かけしたとき、すぐに影森さんだってわかりました」
「え?」
朔が驚いて顔を上げる。
「あっ、ごめんなさい」
もともと優しげな表情が、笑うと目尻が下がり、憎めない顔になる。
「私、彼女とは幼稚園からの付き合いで、ナッちゃんマコちゃんって呼び合う仲だったんです。彼女が東京の大学に行ってからも、ずっと連絡を取り合っていて。
それで、こっちに帰って来たときも、すぐにお見舞いに行って、そのときに写真を見せてもらったんです。なんとなくそんな話になって、彼女、恥ずかしそうに『内緒よ』って」
そこまで言って、ふと彼女の表情が曇る。
「こんなこと、言っちゃってよかったかしら……」
朔は呆然としていて、とても何か言えるような状態には見えない。それで、すかさず望は言った。
「いいと思いますけど。ね、朔ちゃん」
緒川は、今度は目を見開いて望を見る。
「もしかして、望さん?」
今度は、望が面食らう。
「……えっ? そうですけど、なんで? 僕は菜月さんとは」
「ええ、知ってます。彼女が、会ったことはないけど、影森さんには望さんっていう仲のいい従兄弟がいて、よくその人の話をしてくれるって、楽しそうに」
「えっ?」
望は、思わず朔の顔を見る。朔が、菜月に自分のことを話していたなんて……。