第100話 朔に言えないこととカフェの看板と大掃除

文字数 634文字

 俺に出来ることがあれば協力する。朔がそう言ったのを聞いて、望は反射的に、それならば看板を描いてほしいと思ってしまったのだが、さすがに、今の朔にそれは言えない。
 だが、今まで使っていたプレートでは地味過ぎて目立たず、ただでさえ人通りの少ない場所では、あまり意味を成していなかった。そこで、陽太に相談してみると。
「あれはどうですか? よく、カフェやパスタ屋さんなんかの前に、黒板にメニューを書いて置いてあるじゃないですか」
「あぁ、見たことあるよ」
「あれに今日のおすすめを書いたり、料理の写真を貼ったりするのはどうですか?」
「そうか。あぁ、いいかも。陽太くんって頭いいなぁ」
「いや、それほどでも」
 陽太はうれしそうに笑いながら、さらに言った。
「それから……」


 まだ多少は右足を引きずるものの、以前に比べれば、ずいぶんまともに歩けるようになって来た。来週あたりからカフェを再開出来ればと思い、陽太に手伝ってもらって、店の大掃除も始めた。
「母屋とは雰囲気が違って、なんか、すごくかわいいですね」
 モップを持った陽太が、店内を見回して言う。
「でしょ? 内装もいいし、ほとんど使ってなかったらしくてきれいだし、カウンターキッチンまであるから、ほぼ手を入れずに開店出来たんだ。
 初めて見たとき、まるで僕にカフェをやってくださいって言ってるみたいだと思ったよ」
「店内の写真も撮って、SNSに載せましょう。あっ、そういえば」
 陽太は突然、くるりとカウンターの内側にいる望のほうを向いた。
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