第73話 絶たれた連絡手段と朔の懊悩と野山からの電話
文字数 783文字
朔は愕然とする。恐ろしいことに、菜月との連絡手段は絶たれてしまった。
まさか、こんなことになるとは思ってもみなかった。どこにいても、どんなときでも、菜月とはずっと繋がっていられると信じて疑わなかったのだ。
だが自分は、菜月の実家の電話番号も、正確な住所さえ知らない。菜月の友達の名前どころか、友達がいるのかいないのかも。
こんなことになるくらいなら、どんなに嫌がられてもいいから、無理やり菜月について行くのだった。あるいは、早く結婚していたら……。
電源が切られているということは、つまり、それが菜月の意思表示なのだろうか。元気になったら戻って来ると言っていたが、それは体のいい言い訳で、本当は自分と別れるつもりだったのか。
なぜなら、自分は十一歳も年下だし、何より、菜月が二人の関係を秘密にしたがったのがその証拠だ。本気で愛してくれていたのならば、どんなに反対されても結婚したいと思うのではないか。
いや、そんなはずはない。だったら、実家に帰った時点で連絡を絶ち、電話などかけて来なかったはずだ。数日前までは、毎晩電話で話していたのだから。
菜月は、朔が贈ったブルームーンストーンのネックレスを肌身離さず着けていたではないか。素肌をさらし、愛を交わし合うとき、彼女が切なげな声を上げながら昇りつめるとき、いつもその胸で、石は妖しく光っていたではないか。
菜月からの連絡は完全に途絶えた。今頃どうしているのか、元気でいるのかどうかもわからない。
苦しい気持ちのまま、ベッドで体を丸めていると、枕元に置いたスマートフォンが震えた。はっとして手に取るが、電話は野山からだ。
「もしもし、朔くん」
「はい。……お疲れ様です」
「今、いいかい?」
「はい」
朔は体を起こす。野山が言った。
「送ってもらった絵のデータを見たんだけどね」
「はい」
何か不都合があったのだろうか。
まさか、こんなことになるとは思ってもみなかった。どこにいても、どんなときでも、菜月とはずっと繋がっていられると信じて疑わなかったのだ。
だが自分は、菜月の実家の電話番号も、正確な住所さえ知らない。菜月の友達の名前どころか、友達がいるのかいないのかも。
こんなことになるくらいなら、どんなに嫌がられてもいいから、無理やり菜月について行くのだった。あるいは、早く結婚していたら……。
電源が切られているということは、つまり、それが菜月の意思表示なのだろうか。元気になったら戻って来ると言っていたが、それは体のいい言い訳で、本当は自分と別れるつもりだったのか。
なぜなら、自分は十一歳も年下だし、何より、菜月が二人の関係を秘密にしたがったのがその証拠だ。本気で愛してくれていたのならば、どんなに反対されても結婚したいと思うのではないか。
いや、そんなはずはない。だったら、実家に帰った時点で連絡を絶ち、電話などかけて来なかったはずだ。数日前までは、毎晩電話で話していたのだから。
菜月は、朔が贈ったブルームーンストーンのネックレスを肌身離さず着けていたではないか。素肌をさらし、愛を交わし合うとき、彼女が切なげな声を上げながら昇りつめるとき、いつもその胸で、石は妖しく光っていたではないか。
菜月からの連絡は完全に途絶えた。今頃どうしているのか、元気でいるのかどうかもわからない。
苦しい気持ちのまま、ベッドで体を丸めていると、枕元に置いたスマートフォンが震えた。はっとして手に取るが、電話は野山からだ。
「もしもし、朔くん」
「はい。……お疲れ様です」
「今、いいかい?」
「はい」
朔は体を起こす。野山が言った。
「送ってもらった絵のデータを見たんだけどね」
「はい」
何か不都合があったのだろうか。