第44話 部屋に誘うこととクリスマスプレゼントと交際を申し込むこと
文字数 888文字
いつものように、菜月がマンションの前まで送ってくれる。静かに車が停まるのを待って、朔は言った。
「あの、先生」
「なぁに?」
「僕も先生にプレゼントがあるんです」
「え?」
「それで、あの」
意を決して、後を続ける。
「部屋にあるので、もしよかったら、一緒に取りに行ってもらえませんか?」
驚いたような顔をしながらも、菜月は来客用の駐車場に車を停めて、一緒にエレベーターに乗って部屋まで来てくれた。
「素敵なお部屋ねぇ」
スリッパを履いた菜月は、めずらしそうにあちこちに目を向けている。
「あの、冷たいお茶でもいいですか?」
「どうぞおかまいなく。さっきコーヒーも飲んだし」
そう言われて、はいそうですかと言うわけにもいかない。朔は、冷蔵庫からペットボトルのお茶を出し、二つのグラスに注ぐ。
そして、グラスをテーブルに置くと、菜月に声をかけた。
「どうぞ」
「ありがとう」
菜月がテーブルに近づくのを見届けてから、朔は仕事場にしている部屋のドアを開けて入る。
すぐに戻ると、A4サイズの薄い包みを差し出した。
「これ、プレゼントです」
「ありがとう」
立ち上がりながら両手で受け取った菜月が、朔の顔を見ながら言った。
「開けていい?」
「はい」
それは、薄い額に収めた絵だ。今日のために、仕事の合間を縫って描いたのだった。
黙ったまま絵を見つめていた菜月が、やがてつぶやいた。
「素敵……」
「それ、先生です」
いつものように、儚げな女性と月を描いた絵だ。菜月が、ゆっくりと顔を上げて朔を見た。
「僕が描いているのは、全部先生です。中一の頃から、ずっと描きためていました」
美しい二重の目が、じっと朔を見つめる。朔は、深呼吸をしてから、一気に言った。
「初めて会ったときから、ずっと先生のことが大好きです。先生、僕と付き合ってください」
沈黙に耐えられなくなった頃、ようやく菜月が口を開いた。
「何言ってるの?」
「何って……」
そこで朔は、はっとする。
「先生、恋人がいるんですか?」
「いないわ」
即答した菜月を見て思う。たしかに、恋人がいたら、クリスマスイブに朔と食事になど行かないかもしれない。
「だったら」
「あの、先生」
「なぁに?」
「僕も先生にプレゼントがあるんです」
「え?」
「それで、あの」
意を決して、後を続ける。
「部屋にあるので、もしよかったら、一緒に取りに行ってもらえませんか?」
驚いたような顔をしながらも、菜月は来客用の駐車場に車を停めて、一緒にエレベーターに乗って部屋まで来てくれた。
「素敵なお部屋ねぇ」
スリッパを履いた菜月は、めずらしそうにあちこちに目を向けている。
「あの、冷たいお茶でもいいですか?」
「どうぞおかまいなく。さっきコーヒーも飲んだし」
そう言われて、はいそうですかと言うわけにもいかない。朔は、冷蔵庫からペットボトルのお茶を出し、二つのグラスに注ぐ。
そして、グラスをテーブルに置くと、菜月に声をかけた。
「どうぞ」
「ありがとう」
菜月がテーブルに近づくのを見届けてから、朔は仕事場にしている部屋のドアを開けて入る。
すぐに戻ると、A4サイズの薄い包みを差し出した。
「これ、プレゼントです」
「ありがとう」
立ち上がりながら両手で受け取った菜月が、朔の顔を見ながら言った。
「開けていい?」
「はい」
それは、薄い額に収めた絵だ。今日のために、仕事の合間を縫って描いたのだった。
黙ったまま絵を見つめていた菜月が、やがてつぶやいた。
「素敵……」
「それ、先生です」
いつものように、儚げな女性と月を描いた絵だ。菜月が、ゆっくりと顔を上げて朔を見た。
「僕が描いているのは、全部先生です。中一の頃から、ずっと描きためていました」
美しい二重の目が、じっと朔を見つめる。朔は、深呼吸をしてから、一気に言った。
「初めて会ったときから、ずっと先生のことが大好きです。先生、僕と付き合ってください」
沈黙に耐えられなくなった頃、ようやく菜月が口を開いた。
「何言ってるの?」
「何って……」
そこで朔は、はっとする。
「先生、恋人がいるんですか?」
「いないわ」
即答した菜月を見て思う。たしかに、恋人がいたら、クリスマスイブに朔と食事になど行かないかもしれない。
「だったら」