第101話 カフェ「月の満ち欠け」の名前の由来
文字数 600文字
「何?」
「このお店の名前って、『月の満ち欠け』っていうんですよね。前から気になってたんですけど、どういう意味なんですか?」
「あぁ、それね」
望は思わずにやける。自分では最高にいいネーミングだと自負しているのだが、今まで一度も、朔にさえも意味を尋ねられたことはなく、誰か尋ねてくれないものかとずっと思っていたのだ。
「僕の名前は望だけど、『ぼう』って読むと満月のことなんだ。満月を望月とも言うだろ?」
陽太は、曖昧な表情でうなずく。
「一方、朔ちゃんの『朔』は新月のことなんだよ。で、僕と朔ちゃんとで満月と新月で、『月の満ち欠け』っていうわけ。
まぁ、これだと、満月と新月の途中経過みたいになっちゃうけど、語感が気に入ってさ」
「へぇ……」
感心してくれるかと思ったのに、陽太の反応は意外に薄く、望は急に自信がなくなる。
「あれ、駄目だった?」
「いえ、そんなことはないです。素敵だと思います。なんていうか、お店の名前もですけど、お二人の名前がそんなふうにペアになってるのがすごいなぁと思って。
偶然なんですか? それとも、親御さん同士で話し合って決めたんですかね」
「いや、それはないよ。僕の名前は希望の望だって聞いてる」
父と伯父は、そこまで親しくなかった。だから、虐待の事実にも気づくことが出来なかったのだ。
望の胸はちくりと痛んだが、ようやく陽太が、感心したように言った。
「だったら、やっぱりすごいですよ」
「このお店の名前って、『月の満ち欠け』っていうんですよね。前から気になってたんですけど、どういう意味なんですか?」
「あぁ、それね」
望は思わずにやける。自分では最高にいいネーミングだと自負しているのだが、今まで一度も、朔にさえも意味を尋ねられたことはなく、誰か尋ねてくれないものかとずっと思っていたのだ。
「僕の名前は望だけど、『ぼう』って読むと満月のことなんだ。満月を望月とも言うだろ?」
陽太は、曖昧な表情でうなずく。
「一方、朔ちゃんの『朔』は新月のことなんだよ。で、僕と朔ちゃんとで満月と新月で、『月の満ち欠け』っていうわけ。
まぁ、これだと、満月と新月の途中経過みたいになっちゃうけど、語感が気に入ってさ」
「へぇ……」
感心してくれるかと思ったのに、陽太の反応は意外に薄く、望は急に自信がなくなる。
「あれ、駄目だった?」
「いえ、そんなことはないです。素敵だと思います。なんていうか、お店の名前もですけど、お二人の名前がそんなふうにペアになってるのがすごいなぁと思って。
偶然なんですか? それとも、親御さん同士で話し合って決めたんですかね」
「いや、それはないよ。僕の名前は希望の望だって聞いてる」
父と伯父は、そこまで親しくなかった。だから、虐待の事実にも気づくことが出来なかったのだ。
望の胸はちくりと痛んだが、ようやく陽太が、感心したように言った。
「だったら、やっぱりすごいですよ」