第19話 震える朔をソファに寝かせキッチンに戻る二人
文字数 798文字
朔が、両手で頭を庇うようにして、床にうずくまっている。
「朔さん、どうしました? 大丈夫ですか?」
肩に手をかけると、朔はびくりと体を震わせ、さらに身をすくめる。
「朔さん?」
陽太が両手で体を揺するようにすると、朔が、その手から逃れながら悲痛な声を上げた。
「助けて」
え……?
「陽太くん」
わけがわからず、朔の肩のあたりに目をやりながら固まっていると、松葉杖をつきながら近づいて来た望に声をかけられた。顔を上げると、望が黙ったまま首を横に振る。
そして望は、朔に向かって静かな声で語りかけた。
「朔ちゃん、驚かせてごめんね。でも、大丈夫だから安心して」
だが、朔はうずくまったまま答えない。
「朔ちゃん、少し横になって休む?」
それから望は、陽太を見て言った。
「朔ちゃんをソファまで連れて行ってあげて。静かにね」
「はい……」
今度は、なるべくそっと触れながら言う。
「朔さん、立てますか?」
息が荒く、体が震えている。望が声をかける。
「朔ちゃん、ゆっくりでいいから、立ってあっちに行こう」
朔をソファに寝かせた後、二人はキッチンに戻った。さっき望が松葉杖をすべらせた辺りが濡れている。
それを見て、望が言った。
「ボウルから野菜を洗ったときの水がこぼれたのかな。もっと気をつければよかった。
最近、ちょっと松葉杖に慣れて来て、注意力が散漫になっていたかも」
「僕こそ、気がつかなくてすいません。それに……」
割れた食器のかけらが、床に盛大に散らばっている。
「すぐに片付けますね」
陽太は、ホウキとチリトリを取りに行く。
食器のかけらをホウキでかき集めている陽太に、望が言った。
「何もかもやらせちゃってごめんね」
「気にしないでください。そのために僕がいるんですから。
それと、割れた食器の代金は、バイト代から引いてください」
「いや、もとはといえば、全部僕のせいだから。あのさ、朔ちゃんのことだけど……」
「朔さん、どうしました? 大丈夫ですか?」
肩に手をかけると、朔はびくりと体を震わせ、さらに身をすくめる。
「朔さん?」
陽太が両手で体を揺するようにすると、朔が、その手から逃れながら悲痛な声を上げた。
「助けて」
え……?
「陽太くん」
わけがわからず、朔の肩のあたりに目をやりながら固まっていると、松葉杖をつきながら近づいて来た望に声をかけられた。顔を上げると、望が黙ったまま首を横に振る。
そして望は、朔に向かって静かな声で語りかけた。
「朔ちゃん、驚かせてごめんね。でも、大丈夫だから安心して」
だが、朔はうずくまったまま答えない。
「朔ちゃん、少し横になって休む?」
それから望は、陽太を見て言った。
「朔ちゃんをソファまで連れて行ってあげて。静かにね」
「はい……」
今度は、なるべくそっと触れながら言う。
「朔さん、立てますか?」
息が荒く、体が震えている。望が声をかける。
「朔ちゃん、ゆっくりでいいから、立ってあっちに行こう」
朔をソファに寝かせた後、二人はキッチンに戻った。さっき望が松葉杖をすべらせた辺りが濡れている。
それを見て、望が言った。
「ボウルから野菜を洗ったときの水がこぼれたのかな。もっと気をつければよかった。
最近、ちょっと松葉杖に慣れて来て、注意力が散漫になっていたかも」
「僕こそ、気がつかなくてすいません。それに……」
割れた食器のかけらが、床に盛大に散らばっている。
「すぐに片付けますね」
陽太は、ホウキとチリトリを取りに行く。
食器のかけらをホウキでかき集めている陽太に、望が言った。
「何もかもやらせちゃってごめんね」
「気にしないでください。そのために僕がいるんですから。
それと、割れた食器の代金は、バイト代から引いてください」
「いや、もとはといえば、全部僕のせいだから。あのさ、朔ちゃんのことだけど……」