第26話
文字数 734文字
亮介は腰を折り棚の1番下に置かれている本を一冊取り出してみた。特に興味がある訳でもなく、何気なく取り出したその本の表紙はどこかの部族の面が大きく描かれていた。その本のタイトルを亮介は口に出して読んでみた。
「ガダラの豚。…ガダラってなんじゃ?」
本を元に戻し、また周りを見回した。
やはり人の気配は無い。
静寂が辺りを包み込む。
むき出しのコンクリートがどんどん冷やされていくように感じる。
足元から冷気が立ち上り、徐々に全身を巡る血液を凍らせるような感覚に陥ってしまう。亮介は身震いをした。
この場から早く出ていかなければ何かものすごく悪いことが起きそうな予感が立ち上ってきた。
亮介が踵を返して冷たくなったドアノブに手をかけようと後ろを向いたその時、カチャと小さな音を立ててドアノブが回った。
ゆっくりとドアが開いていく。
亮介は身構えた。
開いたドアの隙間から妙に生温かい空気が流れ込んだ。
勝手にドアが開くわけがない。
完全に開けられたドアの向こうには、見覚えのある姿があった。
「あ?中川?」
声の主は同じクラスの吉岡深雪だった。
深雪はクラスでもそんなに目立つ方ではない。しかし、目はクリクリと大きく赤フレームのメガネがよく似合う。前髪が綺麗に揃えられたその顔立ちは実年齢よりもずっと幼く中学生くらいに見られるだろう。
「ん?吉岡?」
亮介は先ほどの緊張から解き放たれた安堵感から、思ったよりも大きな声が出てしまった。
「なんで、吉岡がこんなとこに?」
「それはこっちが聞きたいわ。なんで中川が?あんたは帰宅部でいっつも終礼が終わったらダッシュで帰っていくのに。どうした?」
「は?お前はなんでこんなとこにいてるんだよ?」
「ガダラの豚。…ガダラってなんじゃ?」
本を元に戻し、また周りを見回した。
やはり人の気配は無い。
静寂が辺りを包み込む。
むき出しのコンクリートがどんどん冷やされていくように感じる。
足元から冷気が立ち上り、徐々に全身を巡る血液を凍らせるような感覚に陥ってしまう。亮介は身震いをした。
この場から早く出ていかなければ何かものすごく悪いことが起きそうな予感が立ち上ってきた。
亮介が踵を返して冷たくなったドアノブに手をかけようと後ろを向いたその時、カチャと小さな音を立ててドアノブが回った。
ゆっくりとドアが開いていく。
亮介は身構えた。
開いたドアの隙間から妙に生温かい空気が流れ込んだ。
勝手にドアが開くわけがない。
完全に開けられたドアの向こうには、見覚えのある姿があった。
「あ?中川?」
声の主は同じクラスの吉岡深雪だった。
深雪はクラスでもそんなに目立つ方ではない。しかし、目はクリクリと大きく赤フレームのメガネがよく似合う。前髪が綺麗に揃えられたその顔立ちは実年齢よりもずっと幼く中学生くらいに見られるだろう。
「ん?吉岡?」
亮介は先ほどの緊張から解き放たれた安堵感から、思ったよりも大きな声が出てしまった。
「なんで、吉岡がこんなとこに?」
「それはこっちが聞きたいわ。なんで中川が?あんたは帰宅部でいっつも終礼が終わったらダッシュで帰っていくのに。どうした?」
「は?お前はなんでこんなとこにいてるんだよ?」