第30話

文字数 701文字

「うん。それはそうなんだろうけど、その話ってやっぱり、今回のと何か関係あるの?」
 亮介は探るように聞いてみた。
「そら!あるに決まってるでしょ!」
 妙にかん高い男子の声が横から聞こえてきた。
「へー!誰?」
 あまりにも突然すぎて、亮介の腰は砕け尻餅をついてしまった。
 よく見ると、深雪の向かいに小さな坊主頭の男子学生がコタツに足を突っ込んでいた。
 部長、深雪、坊主頭の三人は目を輝かせていた。

 一度来た道というのは、大抵刺激はなく、淡々と過ぎていく。龍告寺への道は昨日よりも幾分短く感じた。
 最寄りの駅からの急な坂道もそれほど辛くは感じなかった。むしろ爽やかな五月の風が、心地よく道の周りの草花たちが華やいでいるようにも感じた。
 昨日、亮介から話を聞いたブッケンの三人は早速行動に出ようということになった。
 幸い今日は土曜日なので、時間はある。亮介に道案内をさせながら龍告寺を調べようとフィールドワークに出てきたのだ。
 龍告寺の門前は相変わらず荘厳な雰囲気を漂わせていた。
 大きな門扉をくぐると真ん中に大きな松の木がシンメトリーに配置された広い境内が現われる。
 この間はここにコバトのつくボールの音が聞こえていたが、今はシンと静まり返って風の音だけがなっている。
「うわー、広いねぇ」
 深雪が龍告寺の境内の広さに声をあげた。
「坂道は辛くなかった?」
 亮介が声をかけると深雪は
「全然、平気だよ。だって中学まで陸上部で長距離を走ってたもん。」
 と誇らしげに言って深雪は辺りを見渡した。
「ここで昨日はコバトちゃんに出会ったんだね。」
「うん。一人でボールをついてた。」
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