第98話

文字数 822文字

 グルーガは信じられないような顔になって、目の前のモヤを見た。実態がなかったかのようだったモヤが、ドロッとした液体のような形に変わっていた。黒く光るその液体は形を自在に変え、ウネウネと波打っている。その黒い液体が王冠のような形に変わった瞬間、突起の棘が鋭くなりグルーガを突き刺した。四方八方からの攻撃に防御の暇も与えられなかった。グルーガは黒い液体に飲み込まれてしまった。
「グルーガ!」
 ワナギーが長い槍を構えて叫びながらその液体に向かって突っ込んでいった。
「ウオー!」
 ワナギーが何度も何度も液体に向かって槍を突き立てる。しかし、その攻撃も虚しく全く歯が立たない。カキッカキッと虚しい音を立てているだけだった。それでもワナギーは攻撃をやめない。
「ウオー!」
 ワナギーは叫んだ。ワナギーの槍と鋼鉄の液体がぶつかり合い火花が散っている。その瞬間、液体の形は鋭い槍のように変化しワナギーの腹部を一突きで貫いた。ワナギーの攻撃は止んだ。
「ダメかくそ、全く歯が立たない。なんて強さだ!」
 アキが叫んだ。
「アキ、私に任せて。」
 ニッポが弓を構えていた。
「どうやら、あれは表面だけっぽいよ。どちらかというと防御専門。てことは、あれが出ている口のあたりは柔らかいモヤなんじゃないかな」
 そう言うと、ニッポの矢が乱れ飛んだ。何十、何百といった弓矢の攻撃。もちろん、鋼鉄の液体に一本ずつは跳ね返される。しかし、その攻撃は止むことはない。乱れ飛ぶ矢の中をバルーザとアキがその間を縫うように部長に近づいていく。
 二人に気づいた液体は二本の爪のような形になりバルーザとアキを狙った。
「ダメ!貴方の敵は私です!」
 ニッポは弓矢の数を大きく増やして黒い液体に総攻撃をかけた。流石にこの攻撃は耐えられなかったのか、爪の形を平たく変化させ、防御に回したが何本もの弓矢が黒い液体に刺さり始めた。
 その隙に二人は後ろに回り、部長の口元を目指した。
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