第100話

文字数 842文字

「なんて事を。」
 なんと黒い液体は部長の顔全部を覆っていた。唯一の弱点である口元のモヤの出口を顔全体を覆って隠してしまうという、完全防御の姿勢になっていた。
 これでは、ミラン達の武器での攻撃は全く効かない。これを解くには、本体の宿主である部長の呼吸が止まるまで待たなければならない。宿主が死ねば新しい宿主に鞍替えしなければならならない。部長はただ取り憑かれて操られていただけだ。必ず助けなければならない。
 持久戦か。無理だ。呼吸を止めていられるのはもって三分。それ以上なら確実に部長は死ぬ。ジリジリと時間は過ぎて行く。
 部長の体がヒクヒクと痙攣しだした。ダメだ。もう時間がない。
 駄目もとでミラン達は攻撃を始めた。当然刃は跳ね返される。キーンキーンキーンキーンと虚しい金属音が鳴り響くだけだった。
「クソー!どうにもならないの!」
 ミランは覚悟を決めた。そしてこれが最後の一太刀と決めて部長の顔面に突っ込んでいった。
 その時、部長の体がドクンと波打ち黒い液体が顔から剥がれ飛び出てきた。あまりにもの勢いにミランとルーシャは攻撃できず、避けるので精一杯だった。
 何が起きたのか。ミランは部長の顔を改めて見ると、部長の裂けた顎の中、奥歯の上にボロボロに傷を負ったアキとバルーザが片膝をついてこちらを眺めていた。
「アキ!バルーザ!」
 ミランは涙目で二人に近づいた。
「あぁ、やっぱりニッポの矢はキツいな。恐ろしかったよ。」
 バルーザが言った。
「どうしてですか?もうダメかと思っていました。」
 ルーシャの目は完全に涙が溢れている。アキが
「私達がやられたとわかった瞬間、ニッポは攻撃をやめたでしょ。何本も突き刺さって、気絶しちゃったけど。すぐにアイツはモヤをやめて硬い液体に戻ったし、それから顔を覆った。私たちを巻き込んでね。でも、私たちはまだやられていなかったんだよ。剣は突き刺さっていたし、後は引き抜くだけだったから。快復するまでちょっと時間かかったけどね。」
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