第10話
文字数 1,057文字
「オイッ!大丈夫か?」
良観が叫んだ。
「亮介さん。あなたは一体何をしたんですか?」
慶長が、亮介に問いかける。
「いや、俺は何も。」
慌てて事情を説明しようとした。
「この新しいソフトキャンディをこの子にあげたんだよ。そしたら、こんなになっちゃって」
「ソフトキャンディ?」
慶長は亮介の持っていたソフトキャンディのパッケージを乱暴に取り上げて質問した。
「これは?」
「これは、新発売のソフトキャンディ。ウチのスーパーに試供品として配られたやつ。美味しいから持ってきていたんだ。」
「…ふん…」
女の子の肩を抱き起こしていた良観がいった。
「それをこの子は口にしたのか?」
「はい。そしたら、急に…」
「そうか。事情はわかったから、これをなんとかせにゃならん!」
良観が叫んだかと思うとすぐに
「オイ!慶長!今すぐ準備にとりかかるぞ!亮介くんも早くこちらに来なさい。」
といって、女の子の身体をヒョイッと抱き抱えて本堂の方へ歩きだした。
その後ろに慶長が足早について行った。
亮介は慶長の後ろについた。
本堂に入ると慶長は本尊の前に置いてあった前机や木魚、各儀式に使われるだろう仏教用具たちを手際よく端にまとめた。
薬師如来の前には畳二畳ほどのスペースが出来上がった。良観は薬師如来の前に女の子を寝かせた。女の子はまだ肩で息をしている。顔はしかめて苦しそうだ。女の子の小さな口から短い吐息が力なく吐き出されている。
「早く、急げー!侵食されてしまうぞ!」
良観が叫んだ。
「オン コロコロ センダリマトウギソワカ!オン、アビラウンケンソワカ!オン、アビラウンケンソワカ!カーッ!オン コロコロ センダリマトウギソワカ!」
良観が長い数珠を手にしながらお題目を唱えた。
慶長は何かわからない葉っぱで丼に入れられた水をすくっては女の子に浴びせている。
女の子は体を痙攣させながら、肩で早い息を吸っては吐いてを繰り返している。
薬師如来の前の線香からまっすぐ伸びていた煙が今は激しく揺れていた。
「オン コロコロ センダリマトウギソワカ!オン、アビラウンケンソワカ!オン、アビラウンケンソワカ!カーッ!オン コロコロ センダリマトウギソワカ!」
良観の声が激しさを増していく。額は汗でぐっしょりと濡れていた。それでも、良観はお題目をやめようとはしなかった。それどころか、よく通る良観の声は益々大きくなり、力強くなっていった。
「この本堂自体が揺れている。」
亮介はそう感じた。
良観が叫んだ。
「亮介さん。あなたは一体何をしたんですか?」
慶長が、亮介に問いかける。
「いや、俺は何も。」
慌てて事情を説明しようとした。
「この新しいソフトキャンディをこの子にあげたんだよ。そしたら、こんなになっちゃって」
「ソフトキャンディ?」
慶長は亮介の持っていたソフトキャンディのパッケージを乱暴に取り上げて質問した。
「これは?」
「これは、新発売のソフトキャンディ。ウチのスーパーに試供品として配られたやつ。美味しいから持ってきていたんだ。」
「…ふん…」
女の子の肩を抱き起こしていた良観がいった。
「それをこの子は口にしたのか?」
「はい。そしたら、急に…」
「そうか。事情はわかったから、これをなんとかせにゃならん!」
良観が叫んだかと思うとすぐに
「オイ!慶長!今すぐ準備にとりかかるぞ!亮介くんも早くこちらに来なさい。」
といって、女の子の身体をヒョイッと抱き抱えて本堂の方へ歩きだした。
その後ろに慶長が足早について行った。
亮介は慶長の後ろについた。
本堂に入ると慶長は本尊の前に置いてあった前机や木魚、各儀式に使われるだろう仏教用具たちを手際よく端にまとめた。
薬師如来の前には畳二畳ほどのスペースが出来上がった。良観は薬師如来の前に女の子を寝かせた。女の子はまだ肩で息をしている。顔はしかめて苦しそうだ。女の子の小さな口から短い吐息が力なく吐き出されている。
「早く、急げー!侵食されてしまうぞ!」
良観が叫んだ。
「オン コロコロ センダリマトウギソワカ!オン、アビラウンケンソワカ!オン、アビラウンケンソワカ!カーッ!オン コロコロ センダリマトウギソワカ!」
良観が長い数珠を手にしながらお題目を唱えた。
慶長は何かわからない葉っぱで丼に入れられた水をすくっては女の子に浴びせている。
女の子は体を痙攣させながら、肩で早い息を吸っては吐いてを繰り返している。
薬師如来の前の線香からまっすぐ伸びていた煙が今は激しく揺れていた。
「オン コロコロ センダリマトウギソワカ!オン、アビラウンケンソワカ!オン、アビラウンケンソワカ!カーッ!オン コロコロ センダリマトウギソワカ!」
良観の声が激しさを増していく。額は汗でぐっしょりと濡れていた。それでも、良観はお題目をやめようとはしなかった。それどころか、よく通る良観の声は益々大きくなり、力強くなっていった。
「この本堂自体が揺れている。」
亮介はそう感じた。