第19話

文字数 761文字

「でも、なんでこの子が特別な子なの?」
 亮介は聞いた。
「いわゆるマノコに取り憑かれた母親の子どもで、確かに悲惨だろうけど、なんで龍告寺が預かっているの?」
「お寺は困っている人がいると助けないわけには参りません。それに、マノコの存在は公になると困る人たちがたくさんいるのです。確実に騒ぎになります。そうすると龍告寺としても困る事ばかりになります。」
「なるほど。それでコバトを預かっていると。」
「そうです。コバトはまだ幼い。一人では生きていくことは到底できません。コバトは龍告寺で預かることにしました。だから、もうしばらく、時が来るまではこのままです。」
「なるほど。コバトの事はだいたいわかった。けど、それが俺にどう関係あるの?」
「それは、あなたが見た夢です。」
「はぁ」
「あなたは、マノコに取り憑かれるところでした。」
「俺が?」
「それは、コバトの体液と濃厚な接触がありましたから。」
「確かにコバトのゲロを被ったけど」
「そうです。それが少なからず体内に吸収されています。マノコは小さな傷や粘膜からでも必ず体内に侵入します。」
「ウィルスみたいだな」
「そうです。それは目には見えない形で辺りをさまよっています。そして、宿主を見つけるとそこを、住みかとして活動を始めるのです。宿主はキャリアーとなり、食物を通じてマノコをばら撒きます。それは、人の精神に取り付くのです。多くのウィルスは体調を崩します。ですが、マノコは人の精神を壊していきます。」
「じゃあ、コバトはその宿主となっていると」
「そうです。コバトはあの事件の時、母親の返り血を大量に浴びています。もう、マノコに侵食されているのは明らかでした。この子は宿主でありキャリアーなのです。そしてキャリアーは増殖します。」
 亮介は生唾を飲み込んだ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み