第52話

文字数 991文字

「そう・・・アポカリプティックサウンドは音だけ・・・とは限らないのです・・・あらゆる自然現象が・・・アポカリプティックサウンドに・・・ハマるのです」
「・・・部長、ハテナしか出てきませんが」
 深雪が訝しんで答えた。
「俺も。そのアポポリス?何とかって何?」
 亮介も深雪に同調した。
「えーっ!アポカリプティックサウンドも知らないの?そこからの説明?」
 深雪は大げさに驚いて見せた。
 どうやら亮介と深雪の間には大きな知識の溝が横たわっているようだ。
「アポカリプティックサウンドといえば『終末の音』って言われている音のことよ。ヨハネの黙示録に描かれていて、この音が響き渡れば世界の終わりがやってきて人類が滅亡するのよ。んでこれが最近になって世界各地で聞かれているの。」
 深雪がまくし立てるように説明した。
「・・・そうです・・・世界の終わりです・・・」
「でも何でアポカリプティックサウンド?確かに音はなっていなかった」
 西村が小さな声で囁いた。
「・・・西村くん・・・君は・・・ブッケンの研究員でしょう・・・我々は既成概念や・・・常識などという・・・通俗なものとは別離した存在でしょ・・・なぜ・・・アポカリプティックサウンドが・・・音だけなのでしょう・・・現象もアポカリプティックサウンドでいいのじゃ」
「へ?何それ?それじゃあざっくりしすぎじゃん」
 深雪がまたもや反論する。
「それじゃあ、サイコキネシスとかフーディーニの暗号とかポルターガイストとかもそれの一部ってわけ?そんな訳ないでしょう」
 深雪が大きく否定した。さらに続けて、
「さては、部長、最近アポカリプティックサウンドって言葉覚えたんでしょう。だってさっきからやたらアポカリプティックサウンドって言ってるもん。もうアポカリプティックサウンドがゲシュタルト崩壊し始めてる。要は部長は最近覚えたての言葉をさも前から知ってるかのように、そしてこれを知らない一部の人間に知識のひけらかしをしたいだけで言ってる!そうでしょ!残念ながらその言葉は私たちには通じてしまった。だからそのベクトルは中川一人に向いたと。それが証拠に見なさい!」
 深雪は後ろを指差した。
 その先にはボーッと遠くを眺めている亮介がいた。
 亮介はもう早いうちに会話を聞くのを諦め、ただただその場に立っている地蔵のような存在になっていた。
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