第51話

文字数 728文字

 門田の言葉の語尾に力がこもったその時
「部長ぅぅぅぅっ!」
 西村が門田に飛びついた。
「やりましたね!部長ぅぅ、ついに!やりましたよ。僕たち!うぉぉぉぉ!これでもう靴を隠されたり、机に変な落書きされたり、鞄にカラカラに干からびたカエルの死体を入れられたり、いじめられないで済みますよぉぉ」
 ヒョロくチビで変な長髪と坊主頭の高校生の抱擁を亮介は美しく見えながらも、アホらしく覚めた目で見ていた。
「あのぉ、悦に浸っているところ悪いんですけど・・・」
 深雪が二人に声をかけた。
「部長の仮説をそろそろ聞かせてもらえませんかね?」
 亮介も同じだった。
「・・・あぁ、申し訳ありません。・・・つい、気持ちが高ぶってしまって」
 門田は我に返ったようにいつもの聞き取りにくい声になっていた。門田の喋り方はくぐもったようにボソボソと喋る。よく聞き耳を立てておかないと必ず聞き逃してしまう。亮介は門田の話を聞こうといつも以上に集中力を研ぎ澄ました。
「では・・・僕はアポカリプティックサウンドだと・・・思います」
 聞きなれない言葉が急に出てきたので亮介は何のことか理解できなかった。
「アポカリプティックサウンド?でも音は鳴らなかった」
 深雪がすぐさま反論した。
「・・・そうです・・・音はなりません・・・」
「アポカリプティックサウンドなら確実に音が出るはずじゃない」
「・・・違います。アポカリプティックサウンドといえば・・・2011年のウクライナが有名ですよね。・・・カナダやイギリスとか・・・世界各地で聞かれています・・・実は・・・日本でも・・・あるのです・・・はじめは2011年でした・・・京都です・・・」
「それで?」
 深雪が続きを促した。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み