第82話

文字数 752文字

「それは、亮介君が持っていなさい」
 良観はブレイドを指差しながら言った。
「これは、どういう力なのですか?」
「それは、どこでもドアだ。んーん、まぁ、立ち話も何だからみんな座ろうか」
 そう言って良観は薬師如来を背にあぐらをかいた。
 慶長が立ちっぱなしになっている深雪を亮介からあずかり、薬師如来の前に寝かせた。
 それから、良観、亮介、門田、西村、慶長、そして通玄と車座になった。
「さて、どうしようかね。まずはこの寺の因習から話そうか」
 良観はゆっくりと話し出した。
「はるか昔我々の先祖がこの地で壮絶な戦いの後マノコを封印したのはこの前の話でわかってもらえていると思う。実はこの話には少し続きがあって、これは我々織田家の問題でもある。我々の先祖は代々この龍告寺を継いできた。龍告寺には必ず男子が二人生まれた。そのうち一方の男子は家族をつくり、龍告寺を引き継いで行く。しかし、もう一方の男子には子を産み家族を持つことは許されない。家督を継いだものはその力を子供や孫に引き継がせて行くが、継がなかったものは一代限りでその力を失う。その理由はマノコを退治する力の分散を先祖たちが恐れたからかもしれない。表面積と圧力の関係と考えてもらえると分かりやすいかな」
 広範囲に渡ってマノコを封印するより、楔のように一点集中で止まらせておくことの方が力が集中し、強く作用するのだということだろう。
「しかし、その法則が崩れた時、マノコを抑えている力が弱まる。このところマノコの力が強くなってきているのはそういうことだろう」
 良観は少し間を置いて
「・・・実はこの通玄は俺の弟で、コバトはその子供だ」
 通玄は黙って下を向いている。
「え、それじゃ、マノコの復活はこの人が原因ってこと?」
 亮介が聞いた。
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