第33話
文字数 722文字
亮介は慶長に聞いた。
「コバトはあれ以来全く目を覚ましません。ずっと眠ったままです。我々も初めてのことなので少々戸惑っているのです。」
「そうなんだ。」
亮介はコバトに会いたくなった。
「コバトはまだあの部屋に?」
「はい。あれ以来眠ったままで食事もとらずです。」
「ちょっと会いにいってもいい?」
「どうぞ。あなたはコバトにとって、大切な人ですから。」
「私たちは慶長さんにこのお寺のコトを取材しておくし、中川はお好きにどうぞ。」
深雪がそう言って亮介を送り出した。
「では、この寺の由来からお話ししましょう。」
慶長はブッケンの三人に向かって話し出した。
亮介はその姿を見て、寺務所から出ていった。
本堂の裏から続く渡り廊下を渡って、コバトが眠っている部屋の前に亮介は着いた。
引き戸の扉を開けると、部屋の電気は消され障子が閉められ、薄暗かった。
障子越しに入ってくる太陽の光は程よく、優しく畳を照らしていた。新しいい草の匂いが爽やかさをより際立たせている。
その優しい光に照らされて、コバトは布団の中でスヤスヤと寝息を立てていた。
亮介はコバトの横に座り、その寝顔をそっと眺めてみた。
前髪が揃えられたオカッパ頭。透き通るような肌の白さに、一点の赤い唇。長い睫毛はピクリとも動かずその姿はまるでとても良くできた人形のように見えた。
「綺麗だ。」
亮介はふと口から漏れた。本当にそう思えた。
亮介はしばらくコバトの寝顔を眺めた。不思議と飽きることはなく、むしろずっと眺めていたい。この顔を記憶に焼き付けておきたいとさえ思っていた。この美しい少女にあんな壮絶な過去が隠されているとは、誰も気がつくことはないだろう。
「コバトはあれ以来全く目を覚ましません。ずっと眠ったままです。我々も初めてのことなので少々戸惑っているのです。」
「そうなんだ。」
亮介はコバトに会いたくなった。
「コバトはまだあの部屋に?」
「はい。あれ以来眠ったままで食事もとらずです。」
「ちょっと会いにいってもいい?」
「どうぞ。あなたはコバトにとって、大切な人ですから。」
「私たちは慶長さんにこのお寺のコトを取材しておくし、中川はお好きにどうぞ。」
深雪がそう言って亮介を送り出した。
「では、この寺の由来からお話ししましょう。」
慶長はブッケンの三人に向かって話し出した。
亮介はその姿を見て、寺務所から出ていった。
本堂の裏から続く渡り廊下を渡って、コバトが眠っている部屋の前に亮介は着いた。
引き戸の扉を開けると、部屋の電気は消され障子が閉められ、薄暗かった。
障子越しに入ってくる太陽の光は程よく、優しく畳を照らしていた。新しいい草の匂いが爽やかさをより際立たせている。
その優しい光に照らされて、コバトは布団の中でスヤスヤと寝息を立てていた。
亮介はコバトの横に座り、その寝顔をそっと眺めてみた。
前髪が揃えられたオカッパ頭。透き通るような肌の白さに、一点の赤い唇。長い睫毛はピクリとも動かずその姿はまるでとても良くできた人形のように見えた。
「綺麗だ。」
亮介はふと口から漏れた。本当にそう思えた。
亮介はしばらくコバトの寝顔を眺めた。不思議と飽きることはなく、むしろずっと眺めていたい。この顔を記憶に焼き付けておきたいとさえ思っていた。この美しい少女にあんな壮絶な過去が隠されているとは、誰も気がつくことはないだろう。