第42話
文字数 1,213文字
「亮介さん。念じてください!マノコよ退散と、早く念じてください!」
慶長が必死の形相で訴えてくる。その迫力に圧倒されて、亮介は心の中で言われるまま念じた。
「オン コロコロ センダリマトウギソワカ!…オン、アビラウンケンソワカ!…オン、アビラウンケンソワカ!」
慶長のお題目はまだ続き、ますます力が込められていく。
徐々に絹ごし豆腐からモヤが高く伸びてきた。
「オン コロコロ センダリマトウギソワカ!…オン、アビラウンケンソワカ!…オン、アビラウンケンソワカ!」
ズッズッツ、動くはずのない絹ごし豆腐が地面を這っている。モヤは吐き出されるように絹ごし豆腐のパッケージの真ん中から出続けている。
ついにそのモヤが人の背ほどの高さまで上りきったとき、絹ごし豆腐が地面から高く飛び跳ね、まばゆく光を放った。その光は見るもの全員を照らした。一瞬の輝き。そして、すぐに絹ごし豆腐はゆっくりと地面に降りてきた。
亮介は目を固く閉じ、全身に力を込めた。それからゆっくりと目を開けていった。亮介の体調はさっきまでの嫌悪感がまるで嘘のように、みるみるうちに回復していった。頭の痛みも潮が退くように緩やかになって行く。亮介の体調はこのスーパーたかむらに入る前のよりも、むしろすっきりと爽やかだった。
冴えた脳であたりを見回すと、四人が亮介と絹ごし豆腐を眺めていた。
亮介が地面の絹ごし豆腐に目をやると、そこには小さな女の子が絹ごし豆腐の上で眠っているのが見えた。
その女の子は胴回りに薄く丸い鉄の板を何枚も繋ぎ合わせた鎧を身につけていた。胸のあたりにはひときわ大きな鉄の板に、龍の文様が描かれている。肩には虎の毛皮が施された肩当てが装着され、腕は胴回りと同じく薄くて丸い鉄の板が繋ぎ合わされていた。その鉄の板がキラキラと陽の光を反射させまるで魚の鱗のように見える。朱色で縁取られた黒い陣羽織は分厚く華麗な花の文様が施されている。朱色に光る籠手は分厚く、手の先まですっぽりと覆っていた。少し太めのスウェットのような朱色のパンツは大きなバックルの革製のベルトで止められ、足元は華やかな装飾のついたブーツを履いていた。
手には長い槍を持ち、傍らには少し尖った形のヘルメットが転がっていた。
「亮介さんは見えますか?」
「ハッキリと見える。なんかキラキラ光る鎧を着た女の子が。」
「そうですか。これは、この絹ごし豆腐にとり憑こうとしていたマノコです。」
慶長はそういうと絹ごし豆腐の上で寝ているマノコをそっと優しく両手ですくいあげ、亮介に手渡した。
「このマノコはあなたが持っておくのが良いでしょう。」
亮介はマノコを優しく受け取った。
マノコには重さは感じられず、空気のようだった。
改めて見ると、キラキラと輝く鎧が美しい。
亮介は、制服の胸ポケットにマノコをそっとしまった。
胸ポケットは一瞬膨らみ、また元に戻った。
慶長が必死の形相で訴えてくる。その迫力に圧倒されて、亮介は心の中で言われるまま念じた。
「オン コロコロ センダリマトウギソワカ!…オン、アビラウンケンソワカ!…オン、アビラウンケンソワカ!」
慶長のお題目はまだ続き、ますます力が込められていく。
徐々に絹ごし豆腐からモヤが高く伸びてきた。
「オン コロコロ センダリマトウギソワカ!…オン、アビラウンケンソワカ!…オン、アビラウンケンソワカ!」
ズッズッツ、動くはずのない絹ごし豆腐が地面を這っている。モヤは吐き出されるように絹ごし豆腐のパッケージの真ん中から出続けている。
ついにそのモヤが人の背ほどの高さまで上りきったとき、絹ごし豆腐が地面から高く飛び跳ね、まばゆく光を放った。その光は見るもの全員を照らした。一瞬の輝き。そして、すぐに絹ごし豆腐はゆっくりと地面に降りてきた。
亮介は目を固く閉じ、全身に力を込めた。それからゆっくりと目を開けていった。亮介の体調はさっきまでの嫌悪感がまるで嘘のように、みるみるうちに回復していった。頭の痛みも潮が退くように緩やかになって行く。亮介の体調はこのスーパーたかむらに入る前のよりも、むしろすっきりと爽やかだった。
冴えた脳であたりを見回すと、四人が亮介と絹ごし豆腐を眺めていた。
亮介が地面の絹ごし豆腐に目をやると、そこには小さな女の子が絹ごし豆腐の上で眠っているのが見えた。
その女の子は胴回りに薄く丸い鉄の板を何枚も繋ぎ合わせた鎧を身につけていた。胸のあたりにはひときわ大きな鉄の板に、龍の文様が描かれている。肩には虎の毛皮が施された肩当てが装着され、腕は胴回りと同じく薄くて丸い鉄の板が繋ぎ合わされていた。その鉄の板がキラキラと陽の光を反射させまるで魚の鱗のように見える。朱色で縁取られた黒い陣羽織は分厚く華麗な花の文様が施されている。朱色に光る籠手は分厚く、手の先まですっぽりと覆っていた。少し太めのスウェットのような朱色のパンツは大きなバックルの革製のベルトで止められ、足元は華やかな装飾のついたブーツを履いていた。
手には長い槍を持ち、傍らには少し尖った形のヘルメットが転がっていた。
「亮介さんは見えますか?」
「ハッキリと見える。なんかキラキラ光る鎧を着た女の子が。」
「そうですか。これは、この絹ごし豆腐にとり憑こうとしていたマノコです。」
慶長はそういうと絹ごし豆腐の上で寝ているマノコをそっと優しく両手ですくいあげ、亮介に手渡した。
「このマノコはあなたが持っておくのが良いでしょう。」
亮介はマノコを優しく受け取った。
マノコには重さは感じられず、空気のようだった。
改めて見ると、キラキラと輝く鎧が美しい。
亮介は、制服の胸ポケットにマノコをそっとしまった。
胸ポケットは一瞬膨らみ、また元に戻った。