第21話

文字数 679文字

 慶長は何だか嬉しそうに言った。
「こうやって取り出して捕まえてみれば可愛いものなのですがね。」
 と染み染み言って、コバトに視線を落とした。
 コバトはまだ安息の寝息をたてている。
 慶長はコバトの枕元に網の箱を置いた。
「そう言えば、この間のマノコも女の子よように見えたけど。それも、鎧をつけてた。でも、デザインが少し違うような。」
「そうです。それぞれ取り憑く食材によってマノコは姿形を変えるのです。除霊の時は猛烈なエネルギーを発するので普通の人でも見えることがあるのですが、平時にその姿を見ることができる者はごく限られています。亮介さん、貴方は見えるのですね。」
「うん。見えるよ。」
「やっぱり、貴方は…そうですか。」
「ん?」
「少し本堂へ戻りましょうか。」
 そう言うと網の箱を手に、慶長は立ち上がり部屋から出て行こうとした。
「コバトを起こしちゃ可哀想でしょ。」
 それもそうだ。コバトはその小さな体にもかかわらずとてつもない人生を歩んでいた。せめて、この時ばかりはゆっくり眠らせてあげなければ。
 亮介は静かに気をつけながら扉を閉めて先に出ていた慶長の後を追った。

 本堂はしんと静まりかえり、冷ややかな冷気が漂っているように感じた。外は五月の暖かい陽の光が照っているのに、本堂は少し肌寒い。本堂が観音堂に比べて広いこともあるが、それ以上の何かが体感温度を下げているように感じた。
 表からの入り口すぐの寺務所で慶長はお茶を入れた。
 暖かいお茶の香りが湧き上がる。
 慶長は湯呑みを亮介の前に置いた。
 慶長は自分のお茶を一口啜った。
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