第22話

文字数 765文字

 亮介も口の中を湿らせた。優しいお茶の甘さが口いっぱいに広がった。普通、この時期なら冷たい麦茶などが欲しくなるのに、今はこの湯気のたっている暖かいお茶がありがたい。
「コバトが大変な子だということはわかっていただけたと思います。」
「確かにそうだね。あまりにも壮絶な人生すぎてチョット言葉が出てこないや。」
「ですよね。あの子は大変な子なのです。」
「でも、それと俺はどんな関係があるの?」
「そうです。貴方は見えてしまっているのです。」
「なにが?」
「マノコが。」
「マノコ。」
「貴方はどういう訳か選ばれてしまった。」
「何に?」
「もう一度、貴方が見たという森の中の話を思い出してください。貴方は貴方が見たという女性にコバトを助けるよう頼まれましたね。」
「あの人がいうあの子とはコバトのこと。」
「きっとそうです。彼女はきっとコバトの母親か、それに近しい者。貴方はコバトを助けてあげなければならないのです。」
「いや、何に言っているのだろうね。訳がわからないよ。」
「でも、これは事実なのです。貴方は選ばれた。きっと貴方に特別な何かをコバトは感じたのでしょう。」
「いや、守るってどうすれば。それに突然そんな事言われてもどうすれば。」
「何もしなくても結構なのです。貴方は何も。時々コバトに会いに来てあげてくれれば。」
「いや、たまに会いに来るぐらいならいつでもいいけど。守るとかそんなの俺、無理だからね。」
「大丈夫です。ここ何百年も何も起きていません。マノコの活動も強まってはいるものの、今のところ大した動きはなさそうだし。事前に我々が察知して潰していますしね。しかし、キャリアーの存在が気になります。この辺りに少なくとももう一人キャリアーとなっている宿主がいるとおもうのですが。」
 慶長の言葉は急に軽くなった。
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