第69話

文字数 853文字

「それだけ?」
「だって、周りが暗かったし周囲に溶け込んでる感もすごかったし、顔もよく見ないまま走って逃げたんだもん」
「お前ねー、超常現象とか不思議な話とか言ってる割には怖がりすぎじゃないか。」
「生きてる人間が一番恐ろしいってこと中川は知らないの?」
 深雪はむくれていった。
「はいはい、それではとりあえず歩き回ってみましょうか。」
 亮介は入ってきた出入り口とは反対側の出入り口に向かって歩きだした。
 この公園は広さの割に出入り口が二つしかない。ここに来るまでに特段変わったような様子はなかった。公園にも異常は見当たらない。ということは反対側の出口から出て、やってきた道とは別の道を通って翔陵川方面へ抜けることが得策と思えた。
 公園を出ると、工場街へ出る。工場街とはいっても小さな町工場が立ち並ぶ狭い地域だ。両側には何かの部品を作っている工場がならぶ。四人は金属を削る音や、けたたましいトラックのエンジン音を聞きながら歩いた。
 狭い工場街を向けると少し大きな幹線道路に出る。この道路は翔陵川に架かっている橋へ向かう。全国チェーンの服屋やファミリーレストランが等間隔に並べられたごくごくありふれた景色の中を警戒心たっぷりの高校生が歩道を行く。すれ違う人たちは四人をチラリと横目で見るだけですぐに興味をなくす。
「…休憩…しませんか」
 門田が消え入りそうな声で言った。
「はぁ?まだ十五分も歩いてないでしょ。行きはバス使ったし」
「いや…でも深雪くん…体力の限界が…ねぇ…西村くん…」
「ふぁい」
 西村も限界がきてそうだ。
 とりあえず、近くのコンビニエンスストアに入ることにした。ここはイートインスペースのあるありふれたコンビニエンスストアだ。お客は弁当コーナーに作業着を着た男性と文具コーナに中学生位の女の子が一人だけだった。
 深雪と門田はお茶を、亮介はアイスコーヒー、西村はアイスクリームとなぜかポップコーンを買ってイートインスペースに入った。
「さて、これからどうしましょうかね」
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