第59話
文字数 642文字
家に着いた亮介は、制服のままダイニングテーブルについた。リュックは床へ無雑作に落とした。
仕事で遅くなる父親と亮介の二人ぶんの夕食の大皿がラップをかぶせられて寂しそうに待っていた。
リビングでは中学生の妹の祐奈がソファに寝そべってテレビのバラエティー番組を見ている。
「お兄ぃ、早く食べて洗い物済ませなよ。またお母さんに怒られるよ」
祐奈はこっちも見ないで言った。
「わかってるよ」
亮介も祐奈を見ないで返事を返す。いつもの風景だ。
亮介は立ち上がり、味噌汁を温め、ご飯をいつもの茶碗に盛った。いつもの自分の席に座り、茶碗と味噌汁を一番手前に置いた。
「いただきます」
小さく呟いて、箸を片手に猛然と米、オカズ、汁、のローテーションで口に運ぶ。全てがいつもと同じルーティンだ。
程なくして亮介の腹は満たされた。冷えた麦茶を一気に煽ると、今まで残っていた夕食の香りや味が全て綺麗に胃に落とされた。
ダイニングテーブルに残された食器を眺めながら亮介は左胸の重たさを感じていた。
胸ポケットに手を入れてみる。ブレイドに触れる。取り出して天井の照明に照らして眺めてみる。透明の楕円形は冷たく硬い。爪で引っ掻いてみても、弾いてみてもそれは傷一つつかない。といって、鉄やステンレスのような硬さがあるわけでもなく、程よく手に馴染む。
「これから、コイツが俺を守るとか武器になるとか…信じられないな。」
亮介は手に力を込めて強く握ってから、また胸ポケットにブレイドをしまった。
仕事で遅くなる父親と亮介の二人ぶんの夕食の大皿がラップをかぶせられて寂しそうに待っていた。
リビングでは中学生の妹の祐奈がソファに寝そべってテレビのバラエティー番組を見ている。
「お兄ぃ、早く食べて洗い物済ませなよ。またお母さんに怒られるよ」
祐奈はこっちも見ないで言った。
「わかってるよ」
亮介も祐奈を見ないで返事を返す。いつもの風景だ。
亮介は立ち上がり、味噌汁を温め、ご飯をいつもの茶碗に盛った。いつもの自分の席に座り、茶碗と味噌汁を一番手前に置いた。
「いただきます」
小さく呟いて、箸を片手に猛然と米、オカズ、汁、のローテーションで口に運ぶ。全てがいつもと同じルーティンだ。
程なくして亮介の腹は満たされた。冷えた麦茶を一気に煽ると、今まで残っていた夕食の香りや味が全て綺麗に胃に落とされた。
ダイニングテーブルに残された食器を眺めながら亮介は左胸の重たさを感じていた。
胸ポケットに手を入れてみる。ブレイドに触れる。取り出して天井の照明に照らして眺めてみる。透明の楕円形は冷たく硬い。爪で引っ掻いてみても、弾いてみてもそれは傷一つつかない。といって、鉄やステンレスのような硬さがあるわけでもなく、程よく手に馴染む。
「これから、コイツが俺を守るとか武器になるとか…信じられないな。」
亮介は手に力を込めて強く握ってから、また胸ポケットにブレイドをしまった。