第72話
文字数 1,434文字
緒方と会ったコンビニエンスストアからバスで二十分ほど揺られるとスーパーマルカツのある地域に入る。最寄りのバス停「最上町前」から歩いてすぐのところにスーパーマルカツはある。
四人はバスを降りスーパーマルカツに向かう角を曲がった。亮介は普段より人通りが多いように感じた。それも人々はどこかへ行くわけではなくここに集まってきているようにも感じた。
スーパーマルカツに着くとその人の数は一段と増し騒然とした雰囲気に包まれていた。
人混みをかき分けたその先には消防車が二台とパトカーと警察官がいた。
先程からサラサラと弱い雨が降り出し野次馬たちを薄く湿らせていた。
パトカーや消防車の赤色灯は消されていたが、物々しい雰囲気に亮介の胸はざわめいた。
自動扉を抜け店の中に入った。どさくさに紛れてブッケンの三人も自動扉を抜けた。
お客がいない事とBGMがなっていない事以外はいつもと変わらない店内であった。
四台あるレジの一番端のサービスコーナー前に従業員のみんなが集まっていた。
「何かあったんですか」
亮介はベテランパートの高木に声をかけた。
「ああ、中川くん。あのね新人の派遣さんがねフライヤーで失敗しちゃったのー」
人が足りないということで急遽派遣会社から一月間だけの契約で中村と言う三十代の主婦が三日前から働きだしていた。
「クロークって狭いじゃない。段ボールとかもいっぱい積んでてなかなか身動きが取れなくなる時があるじゃない。派遣さんが品出しでスナック菓子を取りに行ったときにバランスを崩しちゃって。その時に山積みにしていた段ボールがなだれたんだって。で、運の悪いことになだれた先が見切り品の箱だったんだ。でその見切り品がトレイのままフライヤーの中にボチャッと。油が跳ねてボヤ騒ぎ。幸いすぐに火は消し止められたんだけど、警備会社のセンサーが感知しちゃってこの騒ぎになっちゃったってこと」
「派遣さんは?」
「うん、手に軽い火傷を負った程度で大した事ないって」
「それはよかった」
「なんでよかったの?派遣さんのおかげで二、三日は営業はできないよ。これじゃぁ私の収入にも大きく関わってくるじゃない」
高木は困った顔でため息まじりにつぶやいた。
「社長と部長は?」
「あー、社長は出張。なんかドバイ行ってるって。絶対バカンスよね。部長はなんかさっき事務所のほうに警察と消防と一緒に入っていったよ」
亮介は改めて店内を見た。BGMが無いだけでいつも通りのスーパーマルカツだ。これからどうなるかはわからないけど被害は少なそうなのですぐにでも仕事は再開できそうだと感じた。
亮介は店内を見回しゆっくりお惣菜コーナーに向かったその時、ドクンと心臓が波打った。
「あっ、まただ」
この感覚はマノコが近くにいる。
亮介は辺りを見渡した。
特になにもない。
「ミラン」
亮介はミランの名を呼んだ。
「はーい」
亮介の胸ポケットが一瞬膨らむと中からミランが飛び出してきた。
目の高さまでミランが浮き上がってきた。
「マノコですね。この辺りにいますよ。すごい波動がビンビンきてます」
「やっぱりそうだよな。今俺の心臓は激しく動いている」
「ご主人様、ブレイドみてください」
亮介はズボンのポケットからミランに渡されたブレイドを取り出した。虹色に輝いていたブレイドは黒く真ん中にブレイドの形より少し小さめの楕円形の赤いシミのようなものが浮き出ていた。
四人はバスを降りスーパーマルカツに向かう角を曲がった。亮介は普段より人通りが多いように感じた。それも人々はどこかへ行くわけではなくここに集まってきているようにも感じた。
スーパーマルカツに着くとその人の数は一段と増し騒然とした雰囲気に包まれていた。
人混みをかき分けたその先には消防車が二台とパトカーと警察官がいた。
先程からサラサラと弱い雨が降り出し野次馬たちを薄く湿らせていた。
パトカーや消防車の赤色灯は消されていたが、物々しい雰囲気に亮介の胸はざわめいた。
自動扉を抜け店の中に入った。どさくさに紛れてブッケンの三人も自動扉を抜けた。
お客がいない事とBGMがなっていない事以外はいつもと変わらない店内であった。
四台あるレジの一番端のサービスコーナー前に従業員のみんなが集まっていた。
「何かあったんですか」
亮介はベテランパートの高木に声をかけた。
「ああ、中川くん。あのね新人の派遣さんがねフライヤーで失敗しちゃったのー」
人が足りないということで急遽派遣会社から一月間だけの契約で中村と言う三十代の主婦が三日前から働きだしていた。
「クロークって狭いじゃない。段ボールとかもいっぱい積んでてなかなか身動きが取れなくなる時があるじゃない。派遣さんが品出しでスナック菓子を取りに行ったときにバランスを崩しちゃって。その時に山積みにしていた段ボールがなだれたんだって。で、運の悪いことになだれた先が見切り品の箱だったんだ。でその見切り品がトレイのままフライヤーの中にボチャッと。油が跳ねてボヤ騒ぎ。幸いすぐに火は消し止められたんだけど、警備会社のセンサーが感知しちゃってこの騒ぎになっちゃったってこと」
「派遣さんは?」
「うん、手に軽い火傷を負った程度で大した事ないって」
「それはよかった」
「なんでよかったの?派遣さんのおかげで二、三日は営業はできないよ。これじゃぁ私の収入にも大きく関わってくるじゃない」
高木は困った顔でため息まじりにつぶやいた。
「社長と部長は?」
「あー、社長は出張。なんかドバイ行ってるって。絶対バカンスよね。部長はなんかさっき事務所のほうに警察と消防と一緒に入っていったよ」
亮介は改めて店内を見た。BGMが無いだけでいつも通りのスーパーマルカツだ。これからどうなるかはわからないけど被害は少なそうなのですぐにでも仕事は再開できそうだと感じた。
亮介は店内を見回しゆっくりお惣菜コーナーに向かったその時、ドクンと心臓が波打った。
「あっ、まただ」
この感覚はマノコが近くにいる。
亮介は辺りを見渡した。
特になにもない。
「ミラン」
亮介はミランの名を呼んだ。
「はーい」
亮介の胸ポケットが一瞬膨らむと中からミランが飛び出してきた。
目の高さまでミランが浮き上がってきた。
「マノコですね。この辺りにいますよ。すごい波動がビンビンきてます」
「やっぱりそうだよな。今俺の心臓は激しく動いている」
「ご主人様、ブレイドみてください」
亮介はズボンのポケットからミランに渡されたブレイドを取り出した。虹色に輝いていたブレイドは黒く真ん中にブレイドの形より少し小さめの楕円形の赤いシミのようなものが浮き出ていた。