第15話

文字数 698文字

その豊かな乳房は薄い布が隠していたが、上から照らされる光がスポットライトのようにその影を腹の上に作っていた。
 装飾は何もつけず、手には小さな壷を手にしていた。女神なのか、天使なのか、それはよく分からなかった。
「よくここまでたどり着きましたね。」
 その声は天空から降り注ぐように、亮介の全身を包んだ。
「あなたはこれから新しい運命を歩んで行くことになるのです」
 心地よい音の周波数にウットリとしてしまう。
「あなたは、なぜ特別な能力もない自分がこの地に足を踏み入らせることができたのかはわからないでしょう。それはあの子がそうさせたのです。あの子があなたを認めたのです。この地を訪れた者は運命に従わなければなりません。もし、それに抗うことがあるなら、それは、あなただけじゃなく、多くの人が悲しむことになるでしょう」
 今の亮介にこの話は無意味だった。ただただこの快感に身を任せることしかできなかった。話す文章は単語単語にブツ切られ、前後の脈略が曖昧になっていた。亮介の頭に記憶として残るのは、単語になった言葉でもなく単なる音でしかなかった。
「あの子を守ってあげてください。あの子はあなたを選びました。あなたにはコレを授けます」
 そう言うと、手に持っていた壷を傾けた。
 トロッとした光の液体がキラキラと流れ出て、亮介の頭を濡らし始めた。
 亮介は訳もわからずただ為すがままにその液体を受け入れた。いや、抗うことなど出来ないほどに快感が全身を巡り、身体中の力という力が無くなり、筋肉や骨はトロけて混ざり合うような感覚があった。
 亮介は目をつむり、その快感に全てを委ねて耽るしかなかった。
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